生乳生産者、FMMO制度改革案を承認(米国)


賛成多数で承認

 米農務省(USDA)農業マーケティング局(AMS)は8月30日、同月2日から
6日に実施された連邦ミルク・マーケティング・オーダー(FMMO)制度改革案
の生乳生産者による全体投票の結果について、賛成多数により同案は承認された
と発表した。

 全体投票は、11の地域で実施され、すべての地域で90%を超える賛成票を集め、
承認の基準である3分の2を大幅に上回る結果となった。


改革案の内容はオーダーの統合と乳価算定方式の見直し

 USDAは今年の3月末、96年農業法に基づくFMMO制度の改革案について、@ミ
ルク・マーケティング・オーダー(地域)の統合(現行の31から11へ)、A飲用
規格(グレードA)生乳の用途別区分の見直し(現行の3区分から4区分へ)、B
グレードA規格生乳の最低取引価格算定の基礎として用いられてきた基礎公式価
格(BFP)について、乳成分の価値に基づき算定される新たな指標価格に変更、C
飲用牛乳(クラスT)に係る最低取引価格の算定方法の変更などを柱とする最終
規則を発表していた(詳細については、本誌99年5月号「トピックス」参照)。
最終規則の実施は今年10月1日の予定であるが、生乳生産者による全体投票での
承認がその条件となっていた。
◇99年1月1日現在のミルク・マーケッティング・オーダー(31地域)◇
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◇今回発表された最終規則に基づくミルク・マーケッティング・オーダー(11地域)◇
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       資料:AMS/USDA
飲用規格(グレードA)生乳の用途区分の見直し
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 注:グレードAは、米保健社会福祉省食品医薬品局(FDA)が示す基準に従
   い、各州が定める飲用向け生乳基準を満たしたもの。グレードBはUSD
   Aが示す基準に従い、各州が定める加工原料乳基準を満たしたもの。


生産者はUSDA案を消極的に支持

 今回の投票結果について、生乳生産者団体である全国生乳生産者連盟(NMPF)
は、全体投票で大多数の賛成票を集めたと言っても、否決した場合、FMMO制度
自体が存在しなくなってしまうために賛成票を投じたにすぎず、生乳生産者がU
SDAの改革案を支持している訳ではないとコメントしている。また、米国最大の
酪農協同組合であるデイリー・ファーマーズ・オブ・アメリカも、同様の見方を
示し、この改革案は、多くの生乳生産者を経済的苦境に追いやるものだと述べた。

 NMPFは、最終規則が実施されると、生乳生産者の所得は年間2億ドル(228億
円:1ドル=114円)減少すると推計しており、今後は議会などとの協力により、
最終規則を改善していかなければならないと主張している。


議会は規則の修正を画策

 こうした生乳生産者の不満を背景に、同規則を修正する法案が、既に何本も議
会に提出されている。

 中でも、最も有力視されている法案(HR1402)は、クラスTの算定につき、現
行のクラスT差額とほとんど変わらないオプション1A(現行のクラスT差額に
最近の経済状況を勘案して微調整を加えたもの)を採用するというもので、クラ
スV(チーズ向け)価格の調整として、チーズ製造経費見合額を1ポンド当たり
17セント(42円/kg)から14.7セント(37円/kg)へ引き下げることや、現行の
価格支持制度を1年間延長することなども含まれている。この法案はNMPFの支持
などを背景に、6月30日に下院農業委員会を通過し、下院議員の過半数の支持を
得ている。


実施までは予断を許さず

 このように、生乳生産者がUSDA案を承認したとはいえ、規則修正を画策する
議会の動きもあり、10月1日からの実施に向けて、先行きはいまだに不透明な状
況にある。9月6日のレーバー・デー(労働者の日)明けに再開される議会におい
ては、USDA案を支持する中西部選出の議員の出方も注目され、今後FMMO制度
をめぐる動きはますます活発化するものとみられる。

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