◇絵でみる需給動向◇
アイルランド食糧ボード(Bord Bia)によると、同国の99年の生体牛輸出頭数 (速報値)は、前年の2.4倍に当たる41万6千頭に急増した。同国は、96年3月にイ ギリスで牛海綿状脳症(BSE)問題が再燃する以前には、エジプトやリビアなど 北アフリカ諸国などに対し、年間30万頭以上の生体牛を輸出していた。その後は BSE問題の影響で有力な域外市場のほとんどを失い、生体牛輸出頭数は減少を続 けていたが、97年を底に増加に転じている。 99年の生体牛輸出頭数を輸出先別に見ると、スペイン向けが19万6千頭と全体 の47%を占め、最大の輸出先となっている。次いで、オランダ、北アイルランド と続き、EU域内向けが8割以上を占めている。域外ではレバノンが唯一の有力市 場となっており、同国向けには前年の2.6倍に当たる7万4千頭が輸出された。 また、99年の輸出向け牛肉加工場の処理頭数は、前年に比べて12%増加したこ とから、牛肉輸出もかなり増加したとみられている。 アイルランドの生体牛輸出 資料:Bord Bia、MLC 注:99年は速報値
このような急激な生体牛や牛肉の輸出拡大は、アイルランドの価格競争力が相 対的に強まったことが要因である。98年8月にロシア通貨ルーブルが切り下げら れたのを機に、EUからの同国向けの牛肉輸出は急激に落ち込んだ。このため、域 内の成牛価格は大きな影響を受けたが、中でも生産量の約9割を輸出に向けてい るアイルランドの価格低下は顕著であった。EU最大の牛飼養国であるフランスと の成牛価格(市場参考価格)の差を見ると、98年後半に生体100kg当たり45ユー ロ(4,905円:1ユーロ=109円)から50ユーロ(5,450円)に拡大した後、おおむ ね同水準で推移している。 肥育素牛の価格も同様な傾向で推移しているとみられ、EU域内においては、割 安なアイルランド産肥育素牛の輸出拡大に食われる形で、フランスの肥育素牛輸 出は前年の水準を大幅に割り込んでいる。 ◇図:アイルランドとフランスの成牛価格◇
アイルランドは、豊富な草地資源をベースにした低コスト生産による価格競争 力を武器に生体牛および牛肉輸出に力を入れており、牛の飼養頭数も一貫して拡 大が続いていた。しかし、先ごろ公表された99年12月現在では、前年に比べて 5.4%減の670万8千頭と減少に転じた。生体牛および牛肉の輸出が急拡大したも のの、依然として成牛価格が低迷する厳しい状況が続いており、生産者の増頭意 欲が大きく減退したことが要因とみられる。このことは、繁殖雌牛の更新用初妊 牛の頭数減少が顕著に見られることにはっきりと表れている。 なお、飼養頭数が減少した結果、2000年の牛肉生産量(枝肉ベース:生体牛で の輸出も含む)も、減少に転じるものとみられている。 アイルランドの牛飼養頭数 資料:アイルランド中央統計局(CSO Ireland) 注:各年12月現在
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