◇絵でみる需給動向◇
ニュージーランド家畜改良公社(LIC)によると、98年の酪農場平均売買価格 は、1ヘクタール当たり11,076NZドル(約61万円:1NZドル=55円)と前年同期 を12.1%下回り、97年に引き続き下落となった。 ニュージーランドでは、80年代末からの東南アジアを中心とした乳製品需要の 高まりを背景に乳製品輸出が拡大し、乳製品増産のために乳価も高水準で推移し た。この結果、乳価の上昇に伴い酪農の収益性は向上し、収益の源となる酪農場 価格も上昇傾向で推移し、95年には13,400NZドル(約74万円)とピークを記録し ていた。 ◇図:酪農場価格および生産者乳価の推移◇
酪農場価格の高騰は、シェアミルカーなど新規参入者の経済負担を増加させる 要因となることから、結果的に酪農場取引件数の低下を招いている。しかしなが ら、1ヘクタール当たりの酪農場価格は低下傾向で推移するものの、1戸当たりの 規模拡大が進む中で、現状の低下率では、新規での参入を促すにはまだまだ難し い状況にあるようだ。 高水準で推移する乳価は、酪農家の経営規模拡大に対する意欲を後押ししてい る。牧草主体のニュージーランドの酪農は、頭数に対し一定の放牧面積を持つこ とが乳量の確保に結びつくことから、規模拡大を進める酪農家は、既存財産(土 地など)を担保に中小酪農家や離農跡地を買収し、放牧面積の確保を図っている。 このため、1ヘクタール当たりの価格は低下しているものの、1戸当たりの酪農場 規模の拡大が進んでいることから、結果的に、担保がぜい弱な新規参入者にとっ て、引き続き狭き門であることは間違いない。 ◇図:酪農場売買戸数および平均面積の推移◇
このような中、近年、南島における新規参入を中心とした酪農生産の目覚まし い伸びが注目される。 北島と南島で構成されるニュージーランドでは、従来、酪農の中心は気候的要 因などから牧草の生育に適した北島とされていた。しかし、80年代に入り北島の 農地開拓がおおむね終わったことから、政府の補助政策などにより、南島でのか んがい施設の整備が進んだ。このため、南島でも年間を通じた放牧が可能となり、 酪農生産を大きく増加させた。 ここ数年、南島における酪農生産の動向は、規模、乳成分など北島と比較して いずれも目覚ましいものがある。LICによると、北島と比較して土地の確保が比 較的安易であり新規参入を促していること、気候的に牧草の生育期間が長いこと、 新規参入のため先進的な酪農経営が取り入れられていることなどが背景にあると している。 また、LICでは、合併による乳業メーカーの巨大化が進む中で、構成員である 酪農家の発言力を強めるためには個々の規模拡大が必要としており、南島の酪農 生産はさらに拡大するものとみられる。 ◇図:北島および南島における酪農動向の推移◇
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