◇絵でみる需給動向◇
デンマークの豚肉生産量はEU全体の1割を占めるにすぎないが、生産の8割以上 を輸出に向けるなど、EUの豚肉需給に少なからぬ影響を及ぼしている。 デンマーク豚肉輸出機構連合(DS)によると、ここ数年拡大を続けてきた同国 の豚飼養頭数は、2000年1月現在には前年比0.6%減の1,191万4千頭とわずかに前 年を下回った。中でも、総飼養頭数の3割以上を占める50kg超の肥育豚は、前年比 2.6%減の349万4千頭と減少した。このことが、全体の飼養頭数を押し下げた要因 の1つとなっており、2000年初めの豚肉生産量は前年を下回るものとみられている。 ただし、@子豚および若齢豚の頭数は前年並みで推移しており、A生産動向に 大きな影響を与える繁殖雌豚の頭数は0.6%減とわずかな減少にとどまっているな ど、今後の豚肉生産の減少をはっきり予見できるような動きは見られない。 デンマークの豚飼養頭数 資料:デンマーク豚輸出機構連合(DS)
イギリスの食肉家畜委員会(MLC)が先に公表したEUの豚肉需給予測によると、 EU全体の2000年の豚肉生産量(枝肉ベース)は、前年比1.3%減の1,777万6千トン になるとしている。回復基調にはあるものの依然として豚肉価格は低い水準で推 移しており、ドイツやフランスなど主要国の生産量が軒並み減少に転じる中で、 デンマークの生産量は前年比1.9%増の177万5千トンと前年を上回る予測がなされ ている。 経営状況に目を向けると、EUの主要生産国同様、デンマークにおいても肉豚生 産者の経営悪化が懸念されている。肉豚生産者が抱える負債は、平均で7万ドル (約800万円:1ドル=110円)との報告もあり、多くの生産者が規模縮小や廃業 を余儀なくされたとみられている。その一方で、大規模層を中心に引き続き生産 規模を拡大する動きが見られ、このことが廃業などによる飼養頭数の減少を補い、 全体の飼養頭数を前年並みに保っているだけでなく、結果として同国の養豚産業 の競争力向上に貢献している。 ◇図:EU主要国の豚肉生産量◇
MLCは2000年も同国の生産増加が続く背景として、輸出が好調とみられること を挙げている。域外輸出については、@日本や韓国などの極東向けが引き続き好 調であることや、Aロシア向けが徐々に回復するとみられることが好材料となっ ている。ユーロ安で推移している為替相場もこうした動きを後押しするとみられ る。 また、同国にとって域内では、統一通貨ユーロに参加していないイギリスが、 ポンド高の影響で魅力のある市場となっている。豚舎を改築した生産者の約8割 が、イギリスの動物愛護規則に合致したフリーストール方式を選択していること にもはっきりと表れている。
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