食品の安全性対策に関するガイドラインを公表(EU)


食品に対する予防的措置の適用に関する原則を明確化

 EU委員会は2月2日、安全性に関して科学的な確証が得られていない食品に関す
る対策のガイドラインを公表した。このガイドラインは、食品の安全性に関する
科学的証拠が不十分、不明確または結論が得られていない場合、その結果を待た
ずに予防的措置を講じられるとする原則(予防原則、Precautionary Principle)
を明確化し、これに基づく統一的な基準を示している。

 これまで、EUでは人や動植物の衛生等に関して、予防原則の適用についての原
則が明確化されていなかったため、食品の安全性に関する問題については、個別
のケースに応じた対策が講じられてきた。このガイドラインは、人や動植物の衛
生等だけでなく環境保護の分野を含めて、統一的な対策をどのように講じるかと
いう指針を示している。

 この原則に基づく対策を講じる場合に必要なポイントは、次の通りとしている。

・危険性の度合いに応じた対策の適用

・特定の食品に対する差別的対策の排除

・既存の対策との整合性に配慮

・対策を講じた場合と講じない場合の費用対効果(実行可能性、経済的費用・効
 果の分析等を含む)

・新たな科学的データに対応した対策の見直し


米国等との新たな紛争に発展する可能性も

 EUでは、この原則が農産物の保護貿易主義の隠れみのではないと主張するとと
もに、世界貿易機関(WTO)加盟国は、この原則に基づく対策を採る権利を有し
ており自由貿易の精神に反していないと主張している。

 このガイドラインは、法的な拘束力はないが、今後のEUの食品安全対策に関し
て少なからず影響を及ぼすものとみられている。EUでは、これまでも、この原則
に基づいた食品の安全性に関する対策が講じられてきた。成長ホルモンを投与し
た牛肉の輸入禁止、乳牛におけるBST使用禁止および遺伝子組み換え食品に関す
る新規認定の凍結等は、いずれもその安全性に関する科学的証拠が不十分、不明
確または結論が得られていない問題に対する措置と位置付けており、消費者保護・
動物愛護の立場から予防的な対策を講じている。この結果、危険性が証明されな
い限り、原則的に輸入を認めるべきであると主張する米国等と意見が真っ向から
対立しており、今後両者の見解がどのように調整されるか注目される。

 なお、今回の公表は、2000年1月にEU委員会で公表した「食品の安全性に関す
る白書」および2月に採択された遺伝子組み換え生物の国際取引きを規制する
「バイオ安全議定書」のフォローアップと位置付けられている。

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