動物愛護を今後の課題として強力に推進(EU)


動物愛護は、EU市民にとって大きな関心事

 EUのバーン委員(公衆衛生/消費者保護担当)は2月16日、欧州議会関係者と
の会談の中で、動物愛護の重要性に言及し、加盟国が責任を持ってEU規則に沿っ
た取り組みを強化すべきとの考えを示した。その概要は、次の通りである。

 動物愛護は、ヨーロッパ市民の大きな関心事である。一般の人々から動物愛護
に関する手紙が毎日寄せられており、その数は個別の問題としては最も多い。

 EUにおける法整備に改善の余地があることは確かであるが、問題の多くは加盟
国による実施不備から生じている。EU規則の実行強化がまず必要とされている。
加盟国は動物愛護の推進についての責任をよく自覚すべきである。基本的な実行
責任は加盟国にあり、各国の実行機関はEU規則に沿うために必要な対策を講じな
ければならない。

 EU委員会には、EU最終条約の動物愛護に関する附属書に基づき、動物愛護規則
の立案および実施について十分にかかわっていく使命がある。

 先の食品安全白書においては、EU委員会は動物愛護の問題が食品政策によりよ
く統合される必要性を認識した。動物愛護問題は同白書で提案された欧州食品安
全庁の仕事になると見込まれる。


動物の輸送に係る基準などの提案を準備

 今後の課題として、次のような動物愛護対策を推進することとしている。

@船舶による動物輸送に係る基準

 船舶の認可条件も含め、積み込み、積み降ろし、畜舎(囲い)、船舶上での管
理の改善等を含む船舶による動物輸送に係る理事会規則を提案する。

A車両による動物輸送に係る基準

 今年中ごろまでに、常設獣医委員会へ動物を輸送する車両における換気(機械
による強制換気)に関する基準を提案する。

 なお、輸送途中の寄宿地における豚の積み降ろし基準に関する理事会指令
(91/628/EEC)の修正については、既に提案されている。また、繁殖用の牛への
同様な規則の必要性も検討中である。

 今年の後半には、雌豚の群飼育において、社会行動パターンを確保するための
飼育規則など、農場における動物愛護対策を取り上げたい。

 動物愛護に関する科学小委員会では、毛皮動物飼育における動物愛護に関する
レポート作りを開始した。また、肥育牛飼育に関するレポートも予定している。


国際的な動物愛護基準の向上をWTOの場で求める

 EU委員会は、近々各国の動物輸送に関する規則の実行状況を取りまとめ、報告
する予定である。実行確保の観点から、繁殖・と畜目的の生体輸出に関し、域外
国との2国間協定の締結の可能性を探求するとしている。

 域外国での輸送者にEUの動物輸送に関する規則を適用することおよび世界貿易
機関(WTO)規則との整合性には強い疑念を持っているが、国境においては適切
に実行する必要があるとしている。このことは、EU加盟申請国との交渉での論点
となるとの見方を明らかにした。

 国際レベルでの動物愛護について、シアトルでのWTO閣僚会議において、動物
愛護に関しEUへの支持がほとんど得られなかったことは、バーン委員も認めて
いる。しかしながら、WTOにおける多国間協議は、国際的な動物愛護基準向上に
は最善の手段であり、この問題がWTO交渉の議題に載るよう引き続き努力する必
要があるとの考えを示した。

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