EU委員会、オランダを硝酸塩指令違反で提訴


問題点が指摘されたオランダのアクションプラン

 EU委員会は3月1日、オランダを「硝酸塩指令」(91/676/ECC)違反で欧州裁判
所に提訴することを決定したと発表した。  

 91年12月に定められた同指令に基づき、加盟各国は、農業(特に家畜ふん尿お
よび化学肥料)による地上水および地下水の硝酸塩汚染を防止するための適切な
措置をとることが義務付けられている。すなわち、加盟国は、地上水、地下水の
モニター調査を実施し、硝酸塩に汚染される恐れのある水域を特定するとともに、
その汚染水を排出する原因となる地域を指定しなければならず、さらに、窒素に
よる水質汚染を防ぐための優良農業指針を策定しなければならないこととされて
いる(93年12月20日期限)。その後、指定地域における窒素汚染を防止するため
の4年間のアクションプラン(行動計画)を策定しなければならないこととされ
ている(95年12月20日期限)。

 オランダでは、国全体を対象とする行動計画が97年12月に策定された。これに
対し、EU委員会は同計画が指令に沿ったものではないとして、昨年8月、指令に
従うべきとの違反の理由を付した見解書を送付した。その後、オランダの農業大
臣からは、指令に沿った法令整備等が提案され、同国とEU関係者との協議が続け
られてきたが、十分な進展が見られなかった。オランダ政府も認めている通り、
同指令に違反していることは明白であるため、欧州裁判所への提訴を決めた。た
だし、今後も協議は続けられる予定である。


求められるふん尿の投入制限量の設定

 指令違反としては、まず、オランダの法令では家畜のふん尿の土地への投入制
限量が直接定められておらず、窒素の収支(出入り量)により間接的に管理され
ている点が指摘された。この方法による規制では、環境へ多量の窒素亡失が認め
られることになり、地下水汚染や北海の富栄養化を引き起こす恐れがあるとした。
また、規制に反した場合の罰則も不十分としている。

 第2に、作物タイプ別に化学肥料の明確な使用制限がない点が指摘された。オ
ランダでは、家畜ふん尿から得られる窒素量が過剰であるにもかかわらず、肥料
使用量が北欧における平均量の2倍となっているという。

 第3に、急傾斜地における肥料使用規定がない点が指摘された。

 その他の問題点としては、水系近くでの肥料使用の緩衝地域が狭いこと、家畜
ふん尿貯蔵タンクの容量規定がないこと、気候条件や降水量を十分に考慮した肥
料使用制限がないこと、砂地における追加措置が十分でないことが挙げられた。


生産者の猛反発により、オランダ政府は問題の解決に苦慮

 オランダ政府は、現在、指令に従うため、家畜ふん尿規制法の導入を検討して
いる。しかしながら、それに伴い、豚をはじめとする家畜頭数の削減が必至であ
り、反対する生産者との調整に補償問題も含め難航している。

 なお、「硝酸塩指令」の各加盟国の順守状況については、EU委員会では、多く
の国が指令の各規定に沿った十分な対策を講じていないとしており、2月1日現在、
デンマーク、フィンランド、ポルトガル、スウェーデンを除く各国に対して法規
違反手続きがとられている。また、本年、各国は行動計画の進ちょく状況等をEU
委員会に報告することとされており、その取りまとめ結果は来年公表予定である。

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