◇絵でみる需給動向◇
98年8月に顕在化したロシアの経済危機により低迷を続けていたEUの牛肉価格 は、飼養頭数の減少に伴う供給量の減少と域内消費の高まりを受けて、99年初め から上昇基調で推移している。2000年6月のEU15ヵ国平均の牛枝肉価格は、前年 同月比3.4%高の133.7ユーロ(約13,637円:1ユーロ=102円)/100kgと、98年前 半の水準に近づきつつある。 過去、EUの牛肉価格は、96年の牛海綿状脳症(BSE)発生、98年のロシア経済 危機と22つの問題の影響により低迷を余儀なくされたが、回復の兆しが見えてい る。 ◇図:牛枝肉卸売価格の推移◇
牛肉価格上昇の背景には、@飼養頭数の減少に伴い、域内の供給量が低下しつ つあること、A順調に推移するEU各国の経済成長が、牛肉消費を側面から押し上 げていること、Bハンバーガーなどファストフードの台頭により、域内での加工 向け原料調達が進んでいることなどがある。 ここ数年、各国におけるファストフードの位置付けは、過去10年あまりの間の 飛躍的な店舗展開により、「日常的な風景」として幅広く浸透しつつある。各社 とも、メニュー構成において国ごとの地域的特色を取り入れるなど、販売戦略の 多様化も見逃せない。ある大手ハンバーガーチェーンのヨーロッパ全体での販売 実績を例に取ると、2000年5月までの1年間で、売上高は38億4,700万ドル(約4,1 16億円:1ドル=107円)と前年比20%増を記録し、北米地域に次ぐ実績を上げて いる。
EU牛肉管理委員会は、先ごろ、開催された会議の中で域内の市場情勢について コメントを出している。これによると、飼養頭数の減少に伴う供給量の減少など により、子牛肉など一部を除き価格は堅調に推移するとしている。また、EUの牛 肉介入在庫量も、非公式ながらゼロとの報告もされており、今後、市場への新た な放出は見込まれず、当面、価格に対する不安定要素は見られない状況にある。 逆に、域外からの輸入などを求める声も一部には出始めている。
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