タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○低下傾向の続く鶏肉輸出価格


3月の輸出単価は大幅な低下

 タイ大蔵省の公表した今年3月の輸出統計によると、冷凍鶏肉の輸出量は前年
比12.4%増の20,781トンとかなりの増加を示しているものの、金額では前年と同
水準の12億7千4百万バーツ(約35億7千万円:1バーツ=約2.8円)となっている。
輸出額の伸び悩みは輸出単価の大幅な低下が原因で、3月は前年比16.0%安の1ト
ン当たり61,306バーツ(約17万2千円)となっている。また、1〜3月までの合計
でも、輸出量が16.5%増となっている一方で、輸出額が2.4%増とほぼ前年と同水
準であることから、1トン当たりの輸入単価は、前年比12.0%安の63,108バーツ
(約17万7千円)となっている。これをドルベースで見ても、前年比16.7%安の1
トン当たり1,650ドル(約17万7千円:1ドル=約107円)と、かなりの下落となっ
ている。

 こうした背景には、タイ経済の通貨危機からの急速な復興に伴い、通貨バーツ
が1ドル=36〜38バーツで安定的に推移している一方で、ブラジルをはじめとす
る輸出国による国際的な鶏肉価格の引き下げがあるとみられている。


国際価格の下落が激化

 冷凍鶏肉輸出業者によると、これまで皮なしむね肉は、1トン当たり2,400ドル
(約25万7千円)で取引されてきたが、最近では2,000ドル(約21万4千円)以下
と下落しており、比較的高水準で推移していたEU向けのものについても、最近で
は1,900ドル(約20万3千円)程度で推移している。このため、平均価格でも1,300
〜1,400ドル(約14〜15万円)と、3月の水準よりもさらに下落している。輸出業
者はこの原因として、世界的な鶏肉の供給過剰を挙げている。同業者によると、
特にブラジルにおいて、エルニーニョによる異常気象の影響で気温が低下し、生
産効率が向上したこと、トウモロコシなどの飼料価格が低水準で推移しているこ
とによる鶏肉生産意欲の向上が、その主な要因となっている。また、タイにおけ
るブロイラー1羽当たりの生産費が約28バーツ(約78円)であるのに対して、ブ
ラジルでは10バーツ(約28円)と半額以下の水準であるともしている。輸出業者
は、例年7〜8月頃から需要期である年末用の注文が入り始め、輸出価格が上昇に
転じるはずであるにもかかわらず、依然として価格の下落が見られていることか
ら、危機感を強めている。

調製品の輸出を強化

 こうした動きに対して、タイの鶏肉輸出業者は、これまでの冷凍鶏肉による価
格競争から、調製品などの付加価値商品の輸出を強化する動きに出ている。これ
は、価格上の競争相手であるブラジルに比べ、タイの労働単価が安く、同時に高
度な加工技術を持っているためと見られている。タイブロイラー加工輸出業者協
会による2000年の輸出予測においても、冷凍鶏肉が前年比6.5%減の19万8千トン
であるのに対して、鶏肉調製品は16.3%増の7万2千トンとされており、調製品輸
出を強化しようとする姿勢がうかがえる。

◇図:ブロイラー平均輸出価格とバーツ為替相場◇

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