イギリス、国産農畜産物のブランド化を推進


統一ロゴで総合的な品質の高さをアピール

 イギリスでは、6月13日から全国農業者組合(NFU)など生産者団体が中心と
なり、国産の農畜産物の競争力向上に向けた取り組みが始められた。その内容は、
食品衛生をはじめとして、動物愛護や環境にも配慮した一定の生産基準(British 
Farm Standard:BFS)を満たした国産の農畜産物に対し、トラクターをかたどっ
た統一ロゴを貼付するというもので、これにより総合的な品質の高さを消費者に
強くアピールするとともに、国産の農畜産物の販売拡大を狙っている。

 対象となる品目は、食肉から野菜、果物などに及び、当初は100品目ほどでス
タートするが、品目は順次増加される。また、これを販売する店舗数は、大手食
品量販店などの協力により、最終的には4千店に達する見込みである。

 NFUは、今回の取り組みを実施するに当たり、BFSのロゴを管理するための新
組織(Assured Food Standards:AFS)を設立した。AFSは、将来的には独立した
組織として、関係団体と協力しつつBFSの管理・運営に当たることになる。


急増する農産物輸入への対応策

 こうした取り組みの背景として、好調なイギリス経済を反映したポンド高によ
り、相対的に割安となった他のEU諸国などからの農畜産物輸入の急増が挙げられ
る。

 ポンドのEU単一通貨ユーロに対する為替相場の動きを見ると、ユーロがスター
トした99年1月には、1ユーロ=0.7ポンドであったものが徐々に上昇し、2000年に
入ると1ユーロ=0.6ポンド前後で推移している。

 この間のイギリスの輸入量を畜産物について見ると(98年と99年を比較)、牛
肉10.9%増、豚肉28.2%増、家きん肉6.3%増といずれも増加した。また、2000年
についても、イギリス食肉家畜委員会(MLC)は、おおむね同様の傾向が続くと
予測している。

 最近では、急増するデンマーク産豚肉製品の輸入に悲鳴を上げる肉豚生産者が、
政府に対し支援を求めるデモを行うなど、生産者サイドは厳しい状況に追い込ま
れている。


背景には食品の安全性に対する関心も

 また、近年、食品の安全性に対して消費者の関心が高まっていることも背景と
して挙げられる。販売に際して小売業界の幅広い協力が得られた要因としては、
BFSが価格面ではなく総合的な品質の高さを強くアピールするものであることか
ら、安全性を求める消費者ニーズという点で生産と販売の思惑が一致したことが
大きい。

 NFUは、今後、BFSの認知度を高めていき、最終的には高品質なイメージを持
つ食品ブランドとして確立させ、国産の農畜産物の販売拡大につなげていきたい
としている。しかし、BFSの取り組みについては、生産者団体自身が他のEU諸国
の農産物と、価格での競争が困難であることを公に認めた結果との見方もできる。

 イギリスの農畜産業を取り巻く環境は、今後の為替動向やイギリスのユーロ参
加の可否などに左右される面も大きいが、依然厳しい状況が続くとみられ、BFS
成功の可否が注目される。

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