EU農相理事会、BSE危険部位除去提案を承認


消費者を守る最良の方法と自己評価

 EU農相理事会は6月19日、牛海綿状脳症(BSE)対策として、全加盟国における
食肉(飼料・肥料用を含む)からの特定危険部位(SRM:BSE感染源となる可能
性が高いと見なされる特定部位)除去に係るEU委員会提案を賛成多数で承認した。
また、EU域外からの輸入食肉についても、BSE非汚染国であると証明されない限
り、同様な措置が義務付けられる予定である。

 採決では、ドイツが棄権し、スペイン、フィンランド、ギリシャおよびオース
トリアが反対に回った。このため、特定多数決での採択には至らなかったが、反
対多数ではなかったため、EU委員会は同提案の実施資格を得ることとなった。

 農相理事会の結果について、バーンEU委員(公衆衛生/消費者保護担当)は
「加盟国による多くの賛同が得られたことに喜んでいる。本措置(SRM除去)は
食肉によるBSE感染の危険を無くし、消費者を新型クロイツフェルト・ヤコブ病
の危険から守る最良の方法である。4月に決定されたBSE監視・検査計画とともに、
堅実かつ総合的な施策の推進により食品安全の約束を果たしたい。」とコメント
した。


EU域外からの輸入食肉についても対象

 同提案は当初のものから若干修正されており、その概要は以下の通りである。

1 2000年10月1日以降、全加盟国は次のSRMを、と畜場または食肉処理場で除去
 しなければならない。

・12ヵ月齢を超える牛の頭がい(脳および眼球を含む)、扁桃、せき髄および回
 腸

・12ヵ月齢を超えたまたは歯肉から永久切歯が生えている羊および山羊の頭がい
 (脳および眼球を含む)、扁桃およびせき髄

・すべての月齢の羊および山羊の脾臓

2 上記1に加え、イギリスおよびポルトガルでは、次のSRMを除去しなければな
 らない。

・6ヵ月齢を超える牛のすべての頭部(舌を除く)、胸腺、脾臓、腸およびせき
 髄

・30ヵ月齢を超える牛のせき柱

3 除去したSRMは、染色し、完全に廃棄しなければならない。廃棄方法は、直
 ちに焼却するか、レンダリング処理後に焼却または承認された場所に埋却する。
 焼却場の不足する国では、他の加盟国での焼却のための輸出を認める。

4 上記1に掲げたSRM除去については、2001年4月1日以降、科学的リスクアセス
 メント(危害評価)においてBSE非汚染国と見なされない限り、EU域外国(輸
 入食肉)にも適用される。

5 2000年12月31日から、BSE感染組織を血液中に混入させる危険のあると畜方法
 は禁止される。


フランスは先行してBSE検査を実施

 一方、フランス農漁業省は6月8日、農家で死亡または獣医師がと畜した2歳以
上の牛4万8千頭を対象に、2億7千1百万フラン(約41億円:1フラン=15円)の予
算を投入し、BSE検査を本年中に実施するとの計画を明らかにした。

 フランスにおける今年のBSE発生数は、21頭(6月19日現在)と報告されており、
このままでは、昨年の31頭を上回る可能性が高くなっていた。フランス政府は、
来年からのEU全加盟国での検査実施に先行して、BSE検査を全国的に実施するこ
とにより、BSEの早期撲滅に役立てたいとの意向である。 

 近年、EUでは、BSEの発生数が増加傾向にある国が見られるが、その要因につ
いては、検査方法の改善により発見率の向上に伴う見かけ上のものとの考え方が
一般的である。しかし、未知の感染源の存在または対策の不備を指摘する声もあ
り、BSE発生状況の早急かつ的確な把握が重要な課題となっている。

※閣僚理事会における意志決定方式

 閣僚理事会における意志決定の方式には、案件の重要性に応じて@単純多数決、
A特定多数決、B全会一致の3種類がある。単純多数決は手続き事項などの決定
に、全会一致は制度の決定など重要事項に用いられるが、法規の採決など多く実
質決定事項の場合は、特定多数決方式が用いられる。これは、各国別に異なる票
数(合計87票)が与えられ、採決のためには委員会の提案事項について62票、そ
の他の場合は10カ国以上による62票以上の賛成が必要とされている。なお、特定
多数決による決定の際、反対票が23〜25票あった場合は、理事会は妥当な期間内
に少なくとも65票で可決できるよう最大限の努力を行うこととされている。

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