アルゼンチン、新農業対策案を発表


経済大臣が新農業対策案を発表

 農業者負債対策と穀物など一次産品価格の下落に対する対策が急務となってい
るアルゼンチンでは、5月下旬、マチネア経済大臣が次の内容の新農業対策案を
発表した。

@国立銀行の借換融資の年間金利を9.17%に引き下げ(一般は12.3%)

AYPF社販売(需要の50%を占める)の農業用ディーゼル油を一定条件の下、卸
 売価格で提供

B新しい農業保険制度の構想

   ただし、財政再建策として98年12月に成立した推定最小所得税と農業融資の金
利に対する課税(新2税)については、農業経営上の影響は認めたものの財政赤
字対策として不可欠との認識を示し、同法の廃止を含めた見直しの検討は先延ば
しされた。


今回の対策案の背景には深刻な農業者負債問題などが

 アルゼンチンでは、昨年来、穀物などの一次産品価格の低下に加え、金利上昇
に伴う金利負担の増加、燃料費や輸送などのサービスコストの上昇により農業の
収益性が低下している。また、同国では、財政再建策として導入された新2税が
農業経営上大きな負担となっている。

 昨年、農業4団体が実施した一連の大規模ストライキは、新2税に反対した農家
の抗議であったが、マクロ経済に左右される農産物輸出国農家のやり場のない怒
りが現れたものだったと言える。

 こうした農業団体の行動に対して、メネム大統領(当時)は、ストライキの最
中に開催された99年の国際農牧工業展で次のようにコメントした。

@一定条件を満たす農業負債に対する償還期間最長20年の借換融資措置(借換金
 利については検討中)

A穀物価格下落に考慮した農業生産資材費などの支払いを立て替えるための国立
 銀行による3%の金利補助付き8億ペソ(約856億円:1ペソ=107円)の融資

 さらに、今後の計画として、新2税と小売価格が上昇している農業用ディーゼ
ル油の内税(12セント(約13円)/リットル)の廃止を含めた運用の検討などを
アピールした。

 アルゼンチンでは農業者負債問題が深刻で、91年兌換(だかん)法導入以後イ
ンフレを見込み高金利で国立銀行融資を受けた農業者が結局返済不能に陥り、同
銀行が担保に取っている膨大な優良農地が競売にかけられる問題に発展していた。


農業団体は対策案に不満を表明

 こうした中、デ・ラ・ルア政権の下、ベロンガライ農牧水産食糧庁長官は、農
業負債対策と穀物価格下落に対する農業融資を当面の課題と位置付けて検討を重
ねてきた。今回の発表は、就任後半年を経た同庁長官が、その間農業団体と根気
よく話し合いを続けた結果に基づくものである。

 農業団体は、今回の発表に対し具体的な対策を評価したものの、@については
借換融資対象基準が厳しく新2税が存続する限り借換金利を引き下げても意味が
ないとし、Aについては、卸売価格で提供される農業用ディーゼル油の販売シス
テムが複雑で実効性に問題があることとその品質が落とされるのではないかとの
懸念を持っている。

 大きな権限を持つ経済省の下で、同庁のさい配も限界があるが、今回の発表に
満足していない農業団体との今後の折衝の成り行きが気になるところである。

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