今冬の穀物生産は豊作を予測(豪州)


わずかながら減少も高水準を維持

 豪州農業資源経済局(ABARE)は6月6日、2000/01年度(2000年7月〜2001
年6月)における主要穀物の収穫予測を発表した。これによると、冬作物(小麦、
大麦、菜種(なたね)など)については、3,440万トンと前年度2%減ながら高水
準の収穫を予測している。これは、単位面積当たりの収穫量は、長期的に見ると
平均的な水準で推移していることから下回るものの、総作付面積が1,922万ヘク
タールと、昨シーズンに比べて9万ヘクタールの増加を見込んでいることによる。

 また、収穫予測と併せ、収穫がほぼ終了した夏作物(ソルガムなど)の収穫状
況も発表している。全体の収穫量は、当初予測を9%下回る440万トンとなった。
クインズランド(QLD)州中央部での大雨に伴う収穫の遅れによる品質の低下が
みられたものの、ニューサウスウェールズ(NSW)州およびQLD州南部では好天
に恵まれ平均以上の単収となり、品質も良好であったとしている。


おおむね安定した生育条件下、大麦作付けが増加

 作目別に面積予測を見ると、大麦は、小麦や菜種に比べ価格面で有利なため、
国内全州での作付けが増加し、昨シーズンを24%上回る280万ヘクタールに、小
麦は2%減の1,170万ヘクタールになるとしている。一方、菜種は、西オーストラ
リア州で作付面積の減少が大きく、全体でも15%減の150万ヘクタールと、大麦
への移行が顕著になりつつある。

 冬作物の州別の作付けについては、次の通り予測されている。

(NSW州)

 秋口にもたらされた理想的降雨により土壌条件が整っているため、作付面積は
昨シーズンを1.5%上回る460万ヘクタールとなり、早稲品種については、平均以
上の単収が予測される。

(QLD州)

 州中央部は、土壌条件が整っているため一部地域を除いて作付けには問題がな
いものの、南部地域では降雨量不足により作付けが通常より4週間程度遅れてい
ると報告されている。このため、作付面積は、昨シーズンから約2%減少し、130
万ヘクタールを上回ることはないとしている。

(ビクトリア州)

 主要な耕作地地域は天候に恵まれ、一部の地域を除いて作付けにとって良好な
土壌条件を備えている。このため、作付面積は昨シーズンを1%弱上回る240万ヘ
クタールとしている。


食肉生産にも影響を及ぼす穀物の生産動向

 ABAREは、今回の発表に当たり、病虫害委員会から報告された春の収穫時期に
おける病虫害の発生について、NSW州西部およびサウスオーストラリア州北部の
事例を挙げ、同様の事例が今後発生する可能性を示唆し、警戒を促している。

 一方、西オーストラリア州およびQLD州については、今後、乾燥による作付け
の遅れから、品質劣化が懸念されるとの予測ではあるが、あくまでも現段階での
ものと強調している。

 穀物生産量の動向は、豪州の肉牛・肉豚産業にとって、その生産が増大する中
で、将来的な方向を左右する大きな要因となりつつある。特に、肉牛では、国際
的な価格競争が激化する中、日本向けを中心に穀物肥育への導入割合が増えてお
り、コスト面での影響が心配されている。

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