米国、カナダ、交渉提案をWTOに提出


包括的な内容の米提案

 米国は6月末、世界貿易機関(WTO)農業委員会第2回特別会合の開催に合わせ
て、農業に関する交渉提案をWTOに提出した。その内容は、交渉期限を2002年末
にすることを目指した、国内支持、市場アクセス、輸出競争などの分野に及ぶ
「大胆かつ包括的なもの」(6月29日・グリックマン農務長官)であり、特に、
国内支持については、これまでとは異なる新たな削減方式が提案されている。主
な提案の内容は、以下の通りとなっている。

(国内支持)

 国内支持に関する現行規律の下では、いわゆる「緑」、「青」、「黄」という
3つの政策区分のうち、削減対象である「黄」の政策についての助成合計量(AM
S)を、実施期間中20%削減(基準期間比)することとされている。これに対し、

今回の米国提案の内容は、

@自国の国内支持を、貿易わい曲性または生産に対する影響が全くないか最小の
 「削減対象から除外される政策」と、それ以外の「削減対象となる政策」の2
 つに区分する。

A各国は、新たな実施期間中、現行のAMSの最終約束水準を出発点として、固定
 された基準期間内における自国の農業総生産額の一定割合(注:各国共通の割
 合を適用)に相当する水準まで、「削減対象となる政策」の水準を毎年漸減さ
 せていく。

というものである。

◇図:「削減対象となる政策」の削減例(農業総生産額300LCU、
現行AMS最終約束水準50LCU、削減率10%の場合)◇

 例えば、ある国の農業総生産額が300通貨単位(LCU)、現行のAMSの最終約
束水準が50LCUで、上記Aの割合が仮に10%に設定されたとすると、その国は、
「削減対象となる政策」の水準を、新たな実施期間が終了するまでに、50LCUか
ら30LCUまで削減するということになる。

 すなわち、概して、農業総生産額の割にはAMSの水準が高い国ほど、削減幅が
大きくなるわけであり、米国は本方式を、「政策の区分を単純化し、各国間で不
均衡なものとなっている貿易わい曲的な措置の水準を実質的に削減するもの」と
している。

(市場アクセス)

@関税

 関税割当品目の枠内税率を含む関税水準の段階的引き下げ、各国間の不均衡の
是正、実行税率と譲許税率の一体化(複雑な関税や組み合わせ関税の廃止)、特
別セーフガード制度の廃止

A関税割当

 割当数量の拡大、数量未達成を防ぐための規律の創設

B輸入国家貿易企業

 排他的な輸入権限の撤廃、透明性の強化

 また、輸出競争については、輸出補助金(金額・数量ベース)の段階的撤廃、
輸出国家貿易企業の排他的な輸出権限の撤廃、輸出税の使用禁止などが提案され
ている一方で、食料安全保障に関する提案の中では、さらなる貿易の自由化と併
せて、食料援助や輸出信用の供与等の重要性がうたわれている。


カナダは市場アクセスに関する交渉提案を公表

 こうした米国提案に先立ち、カナダも、市場アクセスに関する交渉提案を公表
した。国内支持や輸出競争等の分野に関する提案は、9月と11月に開催が予定さ
れている上記特別会合の場で明らかにしていくとしている。

 今回のカナダ提案においては、@高関税品目について、一定のアクセス数量を
確保するために無税枠を設けること、A関税割当品目について、枠内関税の撤廃
や割当数量の拡大などのアクセス増大(また、その程度に応じた枠外税率の設定)
を行うこと、B油糧種子やその製品など可能な産品分野についての関税の相互撤
廃を行うことなどが示されている。

 なお、カナダを含めた農産物輸出国によって構成されるケアンズ・グループ
(18ヵ国)も、あらゆる形態の輸出補助金の完全撤廃を求める交渉提案をWTOに
提出している。

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