農家支援・作物保険改革の法案成立(米国)


予算総額は153億ドル

 クリントン大統領は6月20日、市場価格の低迷に苦しむ農家への支援措置と作
物保険制度の改革が盛り込まれた農業リスク保護法案に署名した。同法案では、
総額で153億ドル(約1兆6千億円:1ドル=107円)に及び、農家支援措置が71億ド
ル(約7千6百億円)、作物保険改革関連措置が82億ドル(約8千8百億円)となっ
ている。クリントン大統領は、作物保険制度の改革内容を評価したものの、農家支
援措置については、本当に支援の必要な農家のみを対象とすべきであるとの不満
を述べている。

3年連続の実施となる農家支援措置

 農家支援措置のうち、市場価格低迷による市場損失支払いは約55億ドル(約5
千9百億円)で、96年農業法で定められた農家直接固定支払制度に基づく支払額
の追加という形で所得補てんが実施される。対象となる生産者については、過去
の作付実績が要件とされるため、現在作付けを行っていない農家が含まれること、
また、所得補てんが不要とみられる大規模生産者も対象となることから、クリン
トン政権などが強く批判している。このほかに、油糧種子、タバコ、落花生など
の生産者への直接支払い、農地保全に対する補助、各種調査研究の実施などが含ま
れている。

 畜産関係の支援措置では、家畜衛生対策の強化により生産者の経済損失を軽減
するという観点から、豚生産者のオーエスキー病ワクチン接種コストや、牛結核撲
滅対策への補助が盛り込まれている。また、調査研究事項としては、家畜排せつ
物の減量化およびリサイクルを図るための技術や、家畜排せつ物の貯蔵システム
および当該システムが機能しなかったときの環境への影響に関する調査研究に対
する補助も含まれている。

 農家支援措置の実施については、3年連続で行われることになり、生産調整や不足
払いの廃止など、市場志向性をより強めた96年農業法の欠陥が改めて浮き彫りに
なることとなった。


作物保険改革では畜産部門にパイロット事業の導入も

 一方、農家のセーフティーネット強化を目的とした作物保険改革については、
農家の参加を促すため、作物保険の保険料に対する政府の補助率が、現在の13〜
55%(保障範囲により変動)から38〜67%へと引き上げられた。また、民間の調
査研究部門への助成を行い、複数年をカバーする保険の研究、気象データに関する
共同研究などの実施を通じて、作物保険の充実を図ることとしている。

 畜産関係のセーフティネットでは、今回初めて畜産部門(主として、肉牛、羊、豚、
山羊、家きん)のパイロット・プログラムが導入されることとなった。同プログ
ラムでは、畜産生産者にとって有効なリスク管理方法を評価することとされており、
その方法として先物・オプション取引や、価格または収入の変動に対する保険など
の活用が挙げられている。また、96年農業法でリスク管理の一環として導入され
た酪農オプション・パイロット・プログラムの対象地域を300の郡まで拡大するこ
とも盛り込まれている。

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