EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○依然厳しい状況が続くイギリス牛肉産業


2000年の牛肉生産は増加に転じるものの、98年の水準には達せず

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)が99年11月に公表した牛肉需給予測によると、
99年のイギリスの牛肉生産量(枝肉ベース)は、前年比4.0%減の66万9千トンと
牛海綿状脳症(BSE)問題発生の前年である95年をピークに4年連続で減少する見
込みである。2000年には同2.4%増の68万5千トンと増加に転じるものの、98年の
水準には達しないと予測されている。

イギリスの牛肉需給見通し
be-eu05.gif (3149 バイト)
 資料:イギリス食肉家畜委員会(MLC)
 注1:枝肉換算ベース	
  2:牛肉調製品は除く	
  3:カッコ内は対前年比	


子牛と畜奨励事業などが牛肉生産の動向に大きく影響

 99年の牛肉生産の減少は、繁殖雌牛頭数の減少に加え、BSE問題による消費減
退への生産過剰対策として96年から実施された子牛のと畜奨励事業(Calf 
Processing Aid Scheme)により、肥育に仕向けられる子牛が減少したことが
大きく影響している。BSE問題の収束に伴い、同事業はイギリスにおいて99年7
月で終了したが、対象となった子牛の頭数は事業開始からの累計で約200万頭に
上り、そのほとんどが乳用種の雄子牛であったとみられている。

 一方、2000年においては、同事業の終了により、@肥育に仕向けられる子牛が
単純に増加するだけでなく、A乳用雄子牛に比べて肉用種(乳用種との交雑種を
含む)の子牛価格が安定していることから、酪農家が肉用種との交雑を増加させ
ることが想定され、この結果、牛肉生産は増加に転じるものと予測されている。

 また、99年5月に合意された共通農業政策(CAP)改革により、2000年度からと
畜奨励金が新設される。このため、同年度に出荷をずれ込ませる動きが生じると
予想され、このことが、99年の生産減、2000年の生産増をもたらす要因の1つと
なる可能性をMLCは指摘している。


2000年の牛肉輸出は、わずか5千トンの厳しい見込み

 EU委員会は、99年8月1日からイギリス産牛肉の輸出を解禁したが、フランス
などはこれを時期尚早としてEUの決定に反発したため、両国間で紛争となってい
た。輸出認定工場がわずか2ヵ所であることや英仏間の紛争の影響もあり、99年
には、牛肉輸出解禁を祝うセレモニー向けに少量の牛肉がEU本部のあるベルギー
に輸出されたほか、わずかな数量が輸出されたにとどまった。

 英仏間の牛肉紛争は混迷の度を深めていること(詳細は欧州「トピックス」参
照)や、2000年が事実上の輸出解禁の初年に当たることから、MLCでは、同年の
牛肉輸出量(枝肉ベース)を95年実績の2%に満たない5千トンと予測している。

 輸出の拡大が思うように見込めない中、ポンド高によりアイルランドをはじめ
とする域内から割安な牛肉が流れ込んでおり、イギリス牛肉産業をめぐる状況は、
依然厳しいものとなっている。

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