世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○高い潜在力を秘めるアルゼンチンのトウモロコシ生産


米国に次ぐ世界第2位の輸出国

 アルゼンチンは、世界のトウモロコシ生産の2〜3%を占めるにすぎないが、世
界貿易の1〜2割を占め、米国に次ぐ世界第2位のトウモロコシ輸出国である。98
/99年度では、生産量が1,350万トンに対し輸出量は820万トンと、輸出向けの割
合が6割強を占める。

 巨大輸出国である米国に比べれば、輸出量をはじめその輸出力は格段に劣るも
のの、広大で肥よくな土地条件から、潜在生産力はかなり高いと考えられる。ま
た、南半球に位置することから収穫期が北半球と正反対というメリットもある。

◇図:アルゼンチンのトウモロコシ生産量および輸出量◇


90年代の経済安定などが生産拡大に寄与

 70年代以降の同国トウモロコシ生産を見ると、気象条件などにより大きな変動
はあるものの、70年代は5百万〜1千万トン、80年代は1千万トン前後、90年代に
入ってからは、ほぼ安定的に1千万トンを超え、97/98年度には1千9百万トンと
史上空前の豊作を記録した。

 90年代に入ってからの同国のトウモロコシ生産は顕著に拡大したが、その背景
としてアルゼンチン農牧水産食糧庁では、@80年代はインフレにより経済が不安
定であったが、91年の兌換制導入により経済が安定したこと、A規制緩和により
流通コストが効果的に削減されたこと、B輸出税が廃止され国際競争力が強化さ
れたこと、Cかんがい設備が充実したこと、D品種改良が進んだこと、E生産段
階での化学肥料などの使用量が飛躍的に増加したこと、F農業機械などへの積極
的な設備投資が行われたこと、G畜産業界からの需要が拡大したことなどを挙げ
ている。

 しかし、98/99年度は、降雨不足に加え、穀物価格が低迷したことから、前年
度に比べ約3割の生産の落ち込みが見られた。


パンパが主要な生産地帯

 首都ブエノスアイレス市を中心とする同国中西部はパンパと呼ばれる広大な草
原地帯で、平坦かつ肥よくな土地条件に加え、気候も温暖で降雨にも恵まれるこ
とから農業・牧畜業の中心となっている。トウモロコシ生産は、ブエノスアイレ
ス州、コルドバ州、サンタフェ州、ラパンパ州の4州で全体の約9割を占める。特
に、ブエノスアイレス州は、全国の約5割のシェアを占めトウモロコシ生産の主
力地帯となっている。
◇アルゼンチンの地図◇
argentin.gif (21675 バイト)

単収は四半世紀でほぼ倍増

 同国のトウモロコシの単収の推移を見ると、気象条件などにより大きく変動す
るものの、70年代前半は2〜3トン/ヘクタールであったが、80年代には3〜4
トン/ヘクタール、90年代には4〜6トン/ヘクタールへと増加を続けており、四
半世紀でほぼ倍増した。しかし、米国の単収(8.1トン/ヘクタール)と比べる
と、まだ6割の水準にとどまっており、今後も増加の余地は十分あるものと考え
られる。


99/2000年度の生産量は前年度比15%増の見込み

 アルゼンチン農牧水産食糧庁によれば、99/2000年度のトウモロコシの作付面
積は、前年度比10%増の359万ヘクタール、生産量については、降雨不足と価格
低迷による前年度の落ち込みから15%増の1,550万トンに回復するとみられてい
る。また、米農務省では同国の輸出量について、前年度比4%増の850万トンと予
測している。

 トウモロコシ価格は、世界的な供給過剰から長らく低迷しているが、米国のよ
うな政府による手厚い支援措置の見られないアルゼンチンの生産農家は、非常に
厳しい経営状況下に置かれていると予想される。

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