◇絵でみる需給動向◇
EU委員会によると、98/99年度(98年4月〜99年3月)のEU15ヵ国の生乳ク オータ超過量(速報値)は、昨年度と同水準の76万3千トンとなった。この結果、 生乳クオータの超過に対し課せられる課徴金は、2億7千万ユーロ(約297億円: 1ユーロ=110円)となっている。 加盟国別に見ると、10ヵ国で生乳クオータを超過しており、このうち超過量は、 イタリアの29万4千トンが最大で、超過量全体の約4割を占めており、課徴金も1 億ユーロ(110億円)に上っている。超過量は、イタリアに次いで、ドイツ、オ ーストリアの順となっており、ギリシャについては、生産量事態が少ないことか ら超過量は少ないものの、超過率が高くなっている。 98/99年度における生乳生産量と課徴金 資料:EU委員会 注:クオータ超過量は、生乳生産量を乳脂肪率3.7%として調整した後 算出される。
生乳生産クオータ制度は、国別に生産枠(クオータ)を設定し、これを超過し た数量に対して、生乳指標価格の115%の課徴金を課すものである。84年度から 導入された同制度は、今回のCAP改革において、2003年に改めて制度の廃止も含 め見直すこととされている。国別のクオータは、95年にEUに加盟したオーストリ アなど3ヵ国に対し新たに設定されたことを除き、93年以降大きな変更はない。 近年、クオータを超過する国が固定化する傾向を見せており、イタリア、オー ストリアなどが常連となっている。こうした国々では、他の加盟国に比べて総じ て乳価が高いため、生産拡大意欲が刺激され、超過基調になっているものとみら れる。なお、CAP改革では、加盟国からの強い要求を受けて、2000年度からイタ リア、アイルランド、スペイン、ギリシャ、北アイルランドでクオータの増枠が 行われる。 EU15ヵ国のクオータ超過率 資料:EU委員会
99年のEU全体の生乳生産は、6月をピークに季節的な生産減少期に入っている。 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、99年1〜9月の生乳生産は、前 年同期比1.1%増の8,785万2千トンとなった(左図参照)。 国別に見ると、夏場に例年以上の高温に見舞われたドイツなどで、前年をわず かに下回っているほかは、ほとんどの国で前年を上回っている。ただし、前年を 上回った生産が行われているスペイン、ポルトガル、オーストリアなどでは、10 月以降、クオータ残枠を意識した生産減が見込まれることから、99年の生乳生産 量は、前年をわずかに上回る水準に落ち着くとみられている。
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