◇絵でみる需給動向◇
ニュージーランド第2位の乳業メーカー(酪農協)であるキーウィ・デイリー ズと第3位のノースランド・コープ・デイリーは、両社が合併することで合意し たと発表した。正式には、それぞれの組合員である酪農家の投票で決定される。 ニュージーランドの生乳処理量のシェアにおいて、キーウィ・デイリーズは 27.2%、ノースランド・コープ・デイリーは9.9%を占めている。仮に合併された 場合、新会社の生乳処理量に占めるシェアは37.1%となり、第1位のニュージー ランド・デイリー・グループの52.7%と合わせ、全体の生乳処理量の89.8%を占 める2大メーカー体制が誕生することとなる。 ニュージーランドの乳業メーカーは、90年代に入り、アジア各国をはじめとす る乳製品需要の高まりに支えられ、順調にその生産を増やしてきた。しかし、政 府の改革政策による規制緩和の流れを受けて、ここ数年、より高い品質の追求、 価格競争力の強化を目指し、企業の合併・吸収による乳業メーカーの集約=“メ ガ・コープ(巨大酪農協)”化が進められている。今回の合併の動きもこの方向 に沿ったものとみられている。 ◇図:生乳処理量と乳業メーカーの推移◇
一方、乳業メーカーの組合員である酪農家は、“メガ・コープ”化に対して賛 成の立場であるものの、徐々に不安感を募らせはじめている。これは、集約化に 伴い企業間の競争原理が低下することにより、メーカー主導での生乳価格統制の 可能性があることへの恐れや、組織が肥大化することで、末端生産者の声が反映 できなくなることへの懸念があるためである。 乳業界では、集約化により国際市場における輸出競争力の強化が図られるため、 結果として生産者へのメリットは大きいとしているが、99年に改選が行われたニ ュージーランド・デイリー・ボードの会長選挙では、改革を推進した現職の会長 が落選するなど、生産農家の不安感は必ずしも払しょくされてはいない。
最近の政治動向を見ると、11月に行われた国政選挙で、規制緩和を推進してき た与党国民党が敗れるなど、国民の中でも規制緩和に対して「改革疲れ」が広ま っている。 今回、新たに政権を担当する労働党を中心とした連合政権は、前政権が行って きた規制緩和の推進に対し、弱者切り捨てにならないよう政府として中立な立場 を取るとしている。 しかしながら、政権交代は、積極的に推進してきた規制緩和を後退させるもの ではなく、むしろ、政府主導から企業主導へと主役が変わるだけであることから、 乳業メーカーにおける“メガ・コープ”化への動きは今後も継続するとみられて いる。
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