フランス、イギリス産牛肉の輸入禁止措置の継続を決定(EU)


安全性の観点から、輸入禁止措置を継続

 フランス政府は99年12月8日、イギリス産牛肉の輸入禁止措置の継続を正式に
表明した。この決定は、フランス食品安全局(AFSSA)が英仏両国首相により11
月25日に合意された5項目からなる輸入解禁の条件について、なお安全性に不安
があるとした評価を受けてのものである。フランス国内ではおおむね好意的に受
け止められているが、EU委員会はEU規則に反するとして、欧州裁判所への提訴
に向けた手続きを進行中である。


英仏両国間で感情的な紛争に発展

 EUにおいて、牛海綿状脳症(BSE)の発生に伴うイギリス産牛肉の輸出禁止措
置は、8月1日に解除されたが、EU加盟国のうち、フランス、ドイツはこの決定を
時期尚早として、イギリス産牛肉の輸入禁止措置を継続していた(詳細は本誌99
年9月号需給動向欄「EUの牛肉」参照)。この問題は、イギリス、フランス両国
間で大きく取り上げられた。イギリスではフランス産農産物の不買運動にまで発
展し、フランスではこの動きへの反発から、農民が英仏間を結ぶユーロトンネル
の出口を封鎖するなど、両国間で感情的なあつれきが高まっていた。

 フランスは、輸入禁止継続の根拠として、AFSSAのレポートを9月30日に公表
していたが、EUの科学委員会は10月29日、フランスの主張には新たな科学的根拠
はなく、生年月日に基づく輸出措置(DBES)の下で輸出管理されるイギリス産牛
肉の安全性に問題はないと全会一致で再確認した。


EU委員会が調停に乗り出す

 EU委員会のバーン公衆衛生および消費者保護担当委員は、食品の安全性にかか
わる問題であるため、科学的な判断を優先するとしつつも慎重な対応をとってき
た。この背景には、新体制におけるEU委員会の結束に乱れを生じさせたくない意
向が見える。ただし、問題がさらに長期化すれば、EU委員会としては、フランス
の反対姿勢に対して何らかの法的措置も検討しなければならず、積極的な調停作
業を開始することとなった。

  イギリスのブラウン農業大臣とフランスのグラバニ農業大臣は、11月2日、EU
委員会の仲介により問題解決に向けた話し合いを行い、フランスの挙げた関心事
項5項目(追跡可能性、検査、加工品、管理、表示)について、専門家協議を実
施することで合意した。


注目されるEU委員会の対応

 その後協議に進展が見られないため、EU委員会は11月16日、フランスをEU規
則違反として欧州裁判所に提訴するための法的手続きを開始すると発表した。こ
の発表がきっかけとなり、両国間の協議が進展し、11月25日、英仏両国首相は輸
入解禁に向けた条件について合意に達した。その後、合意された条件についてAF
SSAに諮問した結果を受けて、フランス政府が最終的な判断を下すことになって
いた。

 フランス政府の今回の決定は、EUのイギリス産牛肉輸出解禁の決定に真っ向か
ら反発し、単一であるべきEU市場内における商品流通の原則に反するものである。
しかし、食品の安全性については、EUの最優先事項として位置付けられているだ
けに、EU委員会が今後どのように対応していくかが注目されている。

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