EU委員会、BST使用禁止措置の延長を提案(EU)


BSTの永続的な使用禁止を提案

 EU委員会は99年10月26日、EU域内で乳牛向けに販売・使用が禁止されている牛
ソマトトロピン(BST)について、2000年1月1日以降も引き続き禁止することを
提案した。この提案では、禁止期限を定めておらず、提案が承認された場合、今
後永続的に使用が禁止されることとなる。EUでは、理事会決定(90/218/EEC)
に基づき、90年からBSTの販売・使用が暫定的に禁止された。さらに94年には、
同理事会決定を改正し、禁止措置を99年12月31日まで延長することを決定してい
る。

 BSTは、乳牛に投与すると乳量が10〜15%程度増加する効果があるホルモンで、
米国などで使用されている。しかし、BSTを使用した場合、乳牛の乳房炎発生率
の上昇、四肢の障害などの弊害があることが報告されている。EU委員会は、BST
を乳牛に使用した場合の動物の健康・愛護面での問題を提案の理由として挙げて
おり、BSTを使用した乳牛から生産された牛乳・乳製品の輸入については、影響
を及ぼすことはないとしている。


家畜衛生、動物愛護の観点からBSTの使用を禁止

 今回の提案に先立ち、EUの家畜衛生および動物愛護に関する科学委員会は、99
年3月、BSTが乳牛に及ぼす影響に関する報告を行った。これによると、BSTを使
用した乳牛は、四肢障害の増加や、乳房炎発生率の明らかな上昇(発生率が15〜
79%上昇)がみられる。さらに、乳牛の繁殖面において、受胎率の低下、懐胎期
間の短縮、多胎出産率の増加等の影響がみられると指摘している。このため、家
畜衛生および動物愛護の側面から、乳牛へのBSTの使用を全面的に禁止すべきで
あると結論付けている。

 EUでは、98年に理事会指令(98/58/EC)を定め、動物愛護の観点から家畜を
保護するための包括的条件を整備した。今回の提案は、こうした状況を背景とし
た同科学委員会の報告に基づくものである。


BSTの人間に対する安全性は、別問題

 また、EU委員会は99年3月、BSTを使用した乳牛から生産された牛乳・乳製品が
消費者の健康に及ぼす影響に関する報告を公表した。この報告は、BSTと腫瘍
(しゅよう)の発現との関連性を指摘している。ただし、EU委員会はその信頼性
についてはさらに十分な研究が必要であるとした。その後、EU委員会は12月8日、
BST残留許容量の基準設定は、公衆衛生の観点から見て必要ないとの提案を行っ
た。これは、99年7月の欧州薬品評価局の動物用医薬品に関する委員会の見解に
基づくものである。一方、BSTの使用禁止の提案は、動物の健康を守るためのも
ので、この提案と矛盾するものではないとしている。

 BSTを使用した乳牛から生産された牛乳・乳製品の安全性については、98年3月、
食品の国際規格を策定するFAO/WHO合同食品規格委員会(CODEX)の諮問機関
(JECFA)が適正量の使用であれば無害であると報告している。99年8月には、
CODEXで牛乳・乳製品中に含まれるBST残留許容量の国際基準設定について検討
されたものの、結論には至っていない。

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