ヒルトン枠の新配分方法をめぐる動き(アルゼンチン)


ヒルトン枠は高い利益を期待できる重要な枠

 現在、EUは、アルゼンチンに対し、高級牛肉枠(ヒルトン枠)(※)として、
年間2万8千トンの割り当てを認めている。98/99年度(7〜6月)の牛肉輸出全体
に占めるヒルトン枠の輸出割合は、輸出量(製品重量ベース)が13%であるのに
対し、輸出価格(FOBベース)では34%を占める。同国がヒルトン枠を重要視す
るのは、枠外輸出と比較して、高い利益を期待できることにある。

(※)EUが輸入を認めている高品質な生鮮冷蔵・冷凍牛肉に対する関税割当枠で、
79年の東京ラウンドで取り決められた。現在、EUは全体の割当数量5万8千1百ト
ンのうち、2万8千トンをアルゼンチンに割り当てている。


枠配分は過去の実績などからきめ細かく定める

 アルゼンチン農牧水産食糧庁は、6月28日付け決議198/99にて、99年および
2000年(対象期間は7月1日から1年間)におけるヒルトン枠の国内への新配分方
法を採択している。食肉処理加工業者(以下「食肉業者」という。)などへの新
配分方法の概要は次の通り。

ヒルトン枠の食肉処理加工業者などへの配分
hilton.gif (7830 バイト)

 旧配分方法では、過去の実績を最優先する@〜Cによるパーセント配分を行っ
ていた。一方、新配分方法では、@〜Cに加え、D〜Fを新たに設定、さらに、
地域への配分を考慮したAでは、6百トンの定量配分を追加している。また、@
とEのベースとなる過去の輸出実績については、ヒルトン枠の輸出実績を対象外
とした。


新配分方法では地方や中小の食肉業者に配慮

 この新配分方法に基づき、配分が行われた結果、大手食肉業者への配分が減少
する一方、地方や中小の食肉業者への配分が増加することとなった。

 農牧水産食糧庁は、Cについて、市場のニーズに対応した、より付加価値の高
いアルゼンチン産牛肉の輸出を図るため、輸出食肉業者と肉牛生産者団体などに
よる輸出共同事業をより厳密に選抜、評価する新基準を策定した後に、配分を行
うとしていた。

 こうした中、農牧水産食糧庁は、10月8日付け決議556/99にて、一定量を新規
事業と既存事業に配分した後、60%を過去3年間の輸出実績に基づき配分、残る
40%を評価項目を点数化して配分することを採択した。評価項目は、振興活動、
新規市場の開拓、品質・品種・原産地の証明手法、生産者との共同活動、生産者
に対する利益移転、インテグレーション、研究、改良などに関するものである。


ヒルトン枠の配分方法は新政権でも1つの課題に

 ヒルトン枠の新配分方法の決定については、大手食肉業者の強い反発を招き、
訴訟問題へと進展した。アルゼンチンでは、10月24日に大統領選が実施され、
野党連合が勝利する政権交代劇があったが、新政権が、ヒルトン枠の配分方法
をめぐる問題にどのように対処するか注目されている。

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