畜産物輸出、家きん肉などを除き不振(中国)


1〜10月の輸出額は4.3%増

 中国税関総署によると、中国の99年10月の全輸出総額は、前年同月比23.8%増
の約182億ドル(約1兆9千億円:1ドル=約106円)となり、7月から4ヵ月連続で
前年同月比がプラスとなった。また、1〜10月の累計輸出額は、前年同期比4.3%
増の1,552億ドル(約16兆円)となった。これにより、1〜9月の累計で初めてプ
ラスに転じた99年の輸出額は、通年で昨年の伸び率0.5%を上回る可能性が高ま
った。

 税関総署は、最近の輸出について、@アジアが通貨・経済危機から脱しつつあ
ることや、中国の輸出の中で大きな割合を占める加工貿易が好調であることなど
から、全体に輸出が回復基調である、A増値税(流通段階でかかる付加価値税で、
輸出製品に対し一定の割合で還付される)の還付率の引き上げなどが、輸出の回
復に奏功している、B機械、電気製品の輸出は、引き続き堅調に伸びているなど
と分析している。


回復基調の家きん肉輸出

 中国の輸出が、主に工業製品などの貢献により全体に回復に向かっている一方
で、主要な畜産物や飼料穀物の輸出は、家きん肉(内訳は示されていないが、鶏
肉が中心)などを除いて99年当初から前年比でマイナスを続けている。豚肉の輸
出は、長引く豚価の低迷による養豚農家の規模縮小・廃業に伴う生産の減少など
から、前年に比べ6割近くも減少した。また、牛肉は国内需要の増加により、年
々輸出が減少する傾向にある。主要な飼料穀物であるトウモロコシについても、
内外の需給が緩和していることなどから、輸出が振るわない状況となっている。

 一方、世界第2位の生産を誇る家きん肉は、輸出が回復する基調にある。中国
の家きん肉輸出は、96年までは増加を続けていたが、97年および98年の輸出は、
タイバーツ急落によるタイ産ブロイラーの輸出競争力増加、香港で発生した鳥イ
ンフルエンザへの懸念などから、それぞれ減少に転じた(本誌99年9月号中国ト
ピックス参照)。しかし、99年はアジア地域の経済が回復基調にあることなどか
ら、1〜10月の冷凍家きん肉(冷蔵品の輸出統計はなし)の輸出は、前年同期に
比べ13.7%増となった。日本は、中国にとって主要な鶏肉の輸出先となっている
が、円高や日本国内での生産が減少傾向にあることなどから、中国からの輸入は、
鶏肉全体で前年同期比5.0%増、距離的な有利さから中国の独断場となっている冷
蔵鶏肉は、18.4%増となっている。

 なお、生きた家きんや豚は、香港、マカオの社会的安定、経済発展などを目的
とした中国政府の政策などもあり、1950年代からこれらの地域が中国の主要な輸
出市場となっている。

99年1月〜10月における主要畜産物などの輸出動向
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 資料:中国海関統計


米中WTO加盟交渉が妥結

 11月15日、中国の世界貿易機関(WTO)加盟に向けた最大の山場の1つとされ
た米中2国間交渉が、基本合意に達した(詳細については、4頁参照)。

 今回の米中合意により、貿易額で世界第11位にある中国が、近い将来WTOに加
盟することはほぼ確実とされている。このことは、今後、中国が国際的な貿易ル
ールの枠組みに入ることを意味し、現在、政府が進めている国有企業、金融制度、
行政機構の3大改革にとって追い風になるとみられている。同国では、WTO加盟
が、短期的には、国際競争にさらされる国内産業にとって逆風となると推測され
ているが、その一方で、長期的には、市場開放による国内経済の活性化や構造改
革が、さらなる中国の発展につながるとの見方もある。中国農業部は、中国のW
TO加盟により、@中国の農業の近代化が促進されること、A豊かな労働力を背景
に、農畜水産物など労働集約型の製品の輸出が有利になることなどの利点を挙げ、
国内不安の解消に努めている。

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