震災からの早期復興に政府のてこ入れ(台湾)


畜産関係の被害額は約22億円

 99年9月21日午前1時47分(日本時間:同日午前2時47分)、台湾中部を震源地
とするマグニチュード7.7の強い地震(921集集大地震)が発生した。行政院農業
委員会(日本の農林水産省に相当)の発表によると、10月5日までの時点で、畜
舎の損壊は約47万2千平方メートル、死亡した家畜は、豚1,088頭、牛10頭、羊
400頭、シカ307頭、同じく家きんは、鶏が約144万羽、ガチョウ650羽、アヒル
1,223羽などとなっている。これら畜産関係の被害額は、6億5,676万元(約21億9
千万円:1元=約3.33円)に上るとされる。


養豚産業への影響は比較的軽微

 農業委員会畜牧行政科では、921集集大地震が畜産業に及ぼす影響について、
次のように分析している。

1 豚などの被災が小さかったこと、また、地震による被害の大きかった台中縣
 および南投縣の豚の飼養頭数が、全国の5%程度とそれほど大きくないことも
 あり、台湾全体の養豚産業への影響は比較的軽微である。

2 台中縣および南投縣では、6ヵ所の種鶏場が被害を受けた。このため、ひな
 の供給が1日当たり10万〜12万羽減少し、当分の間、養鶏産業に少なからず影
 響を与える。

3 養鶏場の損壊や採卵鶏の死亡のほか、地震に対する鶏のストレスや停電など
 から、鶏卵は台湾全体で1日当たり42トンの減産となった。これは総生産量の
 約5%に相当するが、2週間程度で回復し始めると予測される。

4 飼料については、倉庫の損壊などから、台湾全体で約1割の供給減となる。


早期復興に向け政府が援助

 農業委員会は、農業天然災害救助法に基づき、10月1日に南投縣、苗栗縣、台
中縣を現金救援対象地区に、さらに、10月2日には同3縣(10月7日に雲林縣が追
加され、最終的に4縣)を救援融資対象地区に指定した。

 現金救援の申請期限は、公告の日から10日以内、交通遮断などにより不可能な
場合は最長4ヵ月以内(状況により異なる)とされた。救援の対象は、申請項目
の損失率が20%以上に達している者で、養豚関係については、豚1頭当たり500元
(約1千7百円)、畜舎はその構造に応じ、1坪(約3.3平方メートル)当たり500
元(約1千7百円)または1千元(約3千3百円)を基準として現金が支給される。

 また、救援融資は、公告から10日以内に地方の行政機関に被災証明書の発行を
申請し、その発行日から10日以内に農業銀行など融資機関に手続きをとることと
された。交通遮断などにより間に合わない場合は、最長2ヵ月まで(状況により
異なる)延長された。融資の金利は年3%、1人当たりの最高融資額は300万元
(約1千万円)となっている。養豚関係では、豚1頭当たり最高2千元(約7千円)
で融資期間は最長1年、畜舎は1坪当たり最高8千元(約2万6千円)で融資期間は
最長7年とされている。

 11月11日現在、現金救援は全体で9,972戸、総額約1億4千7百万元(約4億8千万
円)が審査の上、決定された。救援融資も併せて受理されたのは、そのうち30戸
であり、融資金額は約2千9百万元(約9千5百万円)に上っている。

 農業委員会は、このほかに、921集集大地震により損壊した畜舎や設備、死亡
獣畜などの廃棄に対し1戸当たり2万元(約6万6千円)の補助金交付や、農業生産
・製造業者および運送販売業者に対する融資(総額30億元(約100億円)、年利
3%で融資期間は最長3年)なども行っており、官民一体となった早期復興への意
気込みが感じられる。

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