◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、99年のEU15ヵ国における域外との牛肉(生体牛および調製品を含 む)貿易量を発表した。これによると、輸出量は96万1千トンと前年比25%増を 記録し、輸入量も42万4千トンと10%の増加となった。 輸出が大幅に増加した背景には、ロシア向けに行われている食料援助の影響が 挙げられる。EUでは、域内の牛肉需給バランスを調整するため牛肉の介入買い入 れを行っており、この介入在庫から援助輸出への充当が行われている。 また、ユーロ安で推移する為替の影響も、輸出増加に影響を与えているとみら れている。
輸出先を国別に見ると、食料援助を含むロシア向け輸出が、輸出量全体の5割 を占めており、以下エジプト、レバノンなど中東向けが続いている。99年3月か ら実施されているロシア向け援助輸出は、枝肉ベースで15万トンとロシア向け輸 出量の4割を占めている。 ロシアに次ぐ輸出先であるエジプト向けの増加については、エジプト国内の経 済成長が大きなけん引力となっている。エジプトでは、政府による「経済改革・ 構造調整計画」により、国営企業の民営化が促進され、アラブ市場向けの食品加 工拠点として近年目覚ましく発展していることに加え、経済成長に伴うし好の変 化と、年間100万人を上回る人口増加が牛肉輸入を増加させる要因となっている。 EU域外への牛肉輸出量(99年) 資料:Eurostat 注1:枝肉換算ベース、生体牛および調製品を含む 2:四捨五入のため合計は一致しない
EU域内への輸入については、ブラジル、アルゼンチンをはじめとする南米から の輸入量が全体の7割を占め、一大供給元となっている。中でも、9割がフローズ ンや調製品で輸入されるブラジルからは、前年比35%増となっており、欧米での 加工向けや調理済み製品への需要の高まりを反映した結果となっている。 また、アルゼンチンからの輸入は、ブラジルとは逆にテーブルミート用のチル ドが中心となり、ドイツ、イタリアを中心に輸入が行われている。 今後の輸入動向については、EU域内の牛肉需給バランスが牛肉介入在庫の減少 などによりややタイトになりつつあることや、ブラジルをはじめとする南米諸国 がいずれも増産を打ち出していることから、増加傾向で推移するものとみられて いる。 EU域内への牛肉輸入量(99年) 資料:Eurostat 注1:枝肉換算ベース、生体牛および調製品を含む 2:四捨五入のため合計は一致しない
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