◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は、昨年3月に合意した共通農業政策(CAP)改革などを実施した場 合の2006/07年までの飼料穀物需給見通しを発表した(見通し策定に当たっての 前提条件は、牛乳・乳製品需給のEU欄を参照)。CAP改革では、価格支持から所 得補償への一層の政策転換を目指し、穀物分野では2000年および2001年に価格支 持水準を合計15%引き下げる一方、引き下げ幅の50%相当を所得補償により補う としている。 穀物分野のCAP改革の概要は、次の通り。
CAP改革の概要(穀物分野) @ 介入価格の15%引き下げ 現行:119.19ユーロ(12,900円:1ユーロ=108円)/トン → 2001年:101.31 ユーロ(10,900円)/トン。2000年および2001年の2段階で実施 A 直接所得補償単価の引き上げ 現行:54.34ユーロ(5,900円)/トン → 2001年:63.00ユーロ(6,800円)/ト ン。2000年および2001年の2段階で実施。引き上げ幅は、介入価格引き下げの50 %相当 B 義務的な休耕率を10%に引き下げ 現行:17.5% → 2000年以降:10% |
EUでは、80年代前半までは穀物全体としては純輸入国であったが、その後、域 内生産を振興し、生産拡大を図ったことにより純輸出国に転換した。98/99年度 の飼料穀物の生産状況を見ると、作付面積は2千万ヘクタールで、生産量は1億 480万トンとなった。飼料穀物の中心は大麦で、全体の約半分のシェアを占める 5,170万トン、次いでトウモロコシが3分の1を占める3,490万トンとなった。 今後の生産量は、天候要因等に大きく左右される可能性はあるものの、そのよ うな要因を考慮しないことを前提とすれば、2006/07年度までの生産量は、作付 面積が徐々に減少する(2006/07年度で1,850万ヘクタール)ものの、単位面積当 たりの収量がトウモロコシ(同年度で9.4トン/ヘクタール)を中心に増加するこ とから、1億トンから1億300万トンへと、増加傾向で推移すると見込まれている。
近年のEUの飼料穀物消費量は、域内の家畜飼養頭数のうち牛が減少傾向、豚、 鶏が増加傾向で推移していることから、ほぼ横ばいで推移してきた。98/99年度 の飼料穀物の消費量は9,210万トンで、うち4分の3に当たる7,070万トンが飼料向 けとなっている。 2000年および2001年のそれぞれ7月に支持価格が引き下げられることから、需 要拡大効果が期待されており、2001/02年度の消費量は9,320万トンに達し、2006 /07年度には9,500万トンになると見込まれている。 支持価格の引き下げは、域内の飼料穀物価格を国際価格に近づけ、消費を促進 させるという効果に限らず、畜産経営にとっては飼料コストの引き下げを通じた 畜産物の生産コストの低下につながることから、その影響は少なくない。
一方、2006/07年度までの飼料穀物輸入量は340万トンで、輸出量は1,040万ト ンで推移すると見込まれる。 以上のような需給見通しから、供給量が需要量を若干上回って推移すると見込 まれ、期末在庫は年々積み増しされることとなり、98/99年度の2,530万トン (うち介入在庫量1,270万トン)から2006/07年度には3,300万トン(同2,160万ト ン)に達するとみられている。
EUでは、農業予算の支出抑制を目指し、2007年までのCAP予算を405億ユー ロ(4兆3,740億円)/年に凍結することで合意した。さらに、中・東欧諸国のEU 加盟交渉が本格化する中、介入在庫の増大による財政支出の拡大は、是非とも避 けたいものと予想される。今回の需給見通しでは、EUの飼料穀物の生産過剰体質 が継続することを示しており、今後のさらなる改革の必要性を示唆したものとみ られる。 EUにおける飼料穀物の需給見込み(97/98〜2006/07年度) 資料:EU委員会 注1:98/99年度までは実績値、99/2000年度以降は予測値 2:穀物年度は7〜6月
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