豪州の牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○増加傾向が続く経産牛頭数


昨年を6万頭上回る212万頭に

 豪州酪農庁(ADC)によると、99年3月末の経産牛頭数(速報値)は、212万
2千頭と前年を3.0%上回った。経産牛頭数は、酪農家戸数の減少に伴い60年代
後半から減少の一途をたどっていたが、92年を境に増加に転じ、ここ数年、年率
3%を超える増加を見せている。増加の背景として、海外市場からのチーズ、脱
脂粉乳を中心とした需要の拡大に加え、最大の乳製品輸出地域であるEUが輸出補
助金を削減したことなどにより、輸出環境がおおむね良好に推移したことから、
生産者乳価が酪農家の増頭を刺激するレベルにあったためである。

 一方、酪農家戸数については、1万3千戸と前年を2.4%下回る結果となった。酪
農を取り巻く環境は、労働条件の厳しさや都市部を中心とした環境問題の高まり
などを受け、年々厳しい状況となっており、好調な国内経済に支えられた他産業
への流出など、中小の酪農家を中心に離農が進行している。

◇図:経産牛頭数および1頭当たり乳量の推移◇


拡大傾向が続く飼養規模

 飼養規模については、酪農家戸数が減少する中、大規模農家を中心に規模拡大
が進んでいる。特にここ数年は、年率5%を超える勢いで増加しており、酪農家
の規模拡大に対する意欲がうかがえる。99年3月末の頭数は1戸当たり161頭と前
年を5.5%上回った。酪農家戸数が減少する中、大規模農家を中心に規模拡大に
伴う機械化の導入など、労働時間の短縮化が図られている。豪州農業資源経済局
(ABARE)が昨年発表した短期予測によると、海外を中心とした乳製品需要は今
後さらに高まるとしており、規模拡大の傾向は今後も続きそうである。

◇図:酪農家戸数および1戸当たり経産牛飼養頭数の推移◇


規制緩和により懸念される大幅な離農

 豪州では、今年7月から加工原料乳に対する価格支持制度が廃止され、さらに
飲用乳規制に対しても、廃止の方向で具体的な検討作業が進められている。こう
した中、飲用乳向け生乳生産地帯であるニューサウスウェールズ(NSW)州では、
酪農家を中心に、豪州最大の酪農生産地帯ビクトリア(VIC)州からの生乳流入
を危ぐする声が高まっている。NSW州の生乳生産コストは、VIC州より3割程度高
いとされており、規制緩和により生乳流入が起きた場合、大幅な離農が予想され
ている。離農による減産を、一時的にほかの地域でカバーすることは難しく、増
加傾向で推移する生乳生産への影響も懸念される。

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