EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○クオータの増枠により、バター在庫が増加(2006年までの需給見通し)


CAP改革、UR合意を前提条件に策定

 EU委員会は99年12月、99年から2006年までの主要農産物(穀物、酪農、食肉)
に関する需給見通しを公表した。この見通しを策定するに当たっての前提条件は、
次の通りである。

@ 99年3月に合意された共通農業政策(CAP)改革は、2000年以降において完
 全に実施されるものとする。

A 輸入枠や輸出補助金などに関するガット・ウルグアイラウンド(UR)合意の
 内容は、2001年から2006年までの期間においても変化のないものとする。

B 99年11月15日までに公表された農業統計情報を基にする。

 牛乳・乳製品に関する概要は、以下の通りである。


クオータの増枠により生乳生産が増加

 99年3月に合意されたCAP改革に基づき、2000〜1年度(4月から翌年3月)お
よび2005年度以降3年間にわたり、生乳生産割当(クオータ)が増枠される。こ
れに伴い生乳出荷量も増加する。ただし、生乳生産量は、乳脂肪率の上昇や自家
消費向け生産の減少等の影響により、その増加幅は生乳出荷量と比較すると若干
小さいものとなる。

◇図:生乳生産の需給見通し◇


チーズ:生産、消費とも緩やかに増加

 チーズ生産は、過去20年間、堅調な消費と輸出を背景として順調に増加したが、
近年のロシア向け輸出の減少などを背景に、生産の伸びは鈍化している。今後も、
堅調な消費に支えられて生産は増加するものの、輸出の増加が見込めないため、
緩やかな増加となる。1人当たりの年間消費量も、98年の17.4kgから2006年には
19.0kgまで増加するが、過去と比較して増加率は低い。

バター:現行水準の生産が続き、在庫が徐々に増加

 今後、需要の低下が見込まれているバター生産は、生乳生産増加分の多くがバ
ター生産に仕向けられる可能性が高く、ほぼ現状と同水準で推移するとみられる。
消費は、86〜94年に減少した後、近年安定していたが、今後は緩やかに減少する。
この結果、バター在庫(介入在庫と民間在庫補助の合計)は徐々に増加し、2006
年末には22万3千トンに達すると予測されている。

◇図:バターの需給見通し◇


脱脂粉乳:生産減少により、在庫は2002年をピークに減少

 脱脂粉乳生産は、需要の低下および脱脂乳を原料とする他の乳製品(チーズ等)
の増加により引き続き減少する。ただし、生乳生産増加分の一部が脱脂粉乳生産
に仕向けられる可能性が高く、2000〜1年には脱脂粉乳在庫量が増加するものの、
2002年をピークに減少する。消費は、食品向けは安定しているが、家畜飼料向け
は牛の総飼養頭数が減少傾向にあることから、引き続き減少するため、全体では
減少傾向で推移するとしている。

クオータの増枠は過剰体質を内在

 先に合意されたCAP改革では、加盟国からの強い要求でクオータの増枠が認め
られた。しかし、その結果として、バター在庫が積み上がる状況になることを、
この見通しは明確に示している。2003年には、クオータ制度について、制度の廃
止も含めて見直しが行われる。その結論を大きく左右するであろうEUの牛乳・乳
製品需給の今後の動向が注目される。

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