◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は99年12月、主要農産物(穀物、酪農、食肉)に関する99年から2006 年までの需給見通しを公表した。この需給見通しは、99年3月に合意された共通 農業政策(CAP)改革が完全に実施された場合の、今後の農産物の需給動向を示 したものである(見通し策定に当たっての前提条件は、牛乳・乳製品需給のEU欄 を参照)。豚肉についての概要は以下の通りである。
96年の牛海綿状脳症(BSE)や97年の豚コレラのまん延の影響による肥育豚価 格の高騰により、近年、急速に拡大した豚肉生産は、短期的な需給動向に大きな 影響を与えるとみられる。98〜99年にかけての豚肉生産量の増加は、97年の生産 量の約1割に相当する160万トン前後にも及び、この結果、肥育豚価格は、記録的 な水準にまで落ち込んだ。2000年には、現在も続いている価格低迷に反応して、 生産は減少に向かうとみられるが、急速な飼養頭数の縮小がなければ、96〜97年 の生産量を上回る危険性もある。生産の減少の幅がわずかなものにとどまった場 合、肥育豚価格の回復につながるには十分ではなく、2001年も生産減少が続くと みられる。 2006年までの豚肉需給見通し 資料:EU委員会 注1:数値は枝肉ベース 2:消費量の( )の単位はkg/年・人 3:97、98年は実績値、99年以降は見込値
CAP改革による飼料穀物の介入買入れ価格の引き下げ(詳細は世界の穀物需 給を参照)に伴う飼料穀物価格の低下は、肉豚生産者の収益性の改善につながる だけでなく、EU産豚肉の国際競争力の向上ももたらす。中長期的に見ると、域外 輸出と域内消費の増加により、EUの豚肉生産は拡大傾向で推移すると予測されて おり、2006年には1,831万トン(枝肉ベース)に達するとしている。
豚肉の消費は、中長期的に見ると、引き続き拡大傾向で推移すると予測されて いる。96年のBSE問題で、牛肉から他の食肉に需要がシフトした結果、豚肉の消 費量も急速に増加したが、既に高い消費水準に到達していることから、今後、そ の伸びは鈍化するとみられる。1人当たりの年間消費量は、98年の43.7kgから 2006年には45.1kgにまで増加するとしている。 豚肉が食肉全体の消費に占める割合は約2分の1(98年)となっているが、豚肉 の消費量が緩やかに増加するにもかかわらず、全体に占める割合は大きく変化し ないものとみられる。一方、鶏肉の消費は、簡便性や安価なことから豚肉を超え る高い伸び率で増加している。96年に牛肉の消費を超えた後は、その差が拡大し ており、このような鶏肉消費の拡大は、豚肉消費の伸び率が鈍化すると予測され る要因の1つともなっている。 ◇図:EUの食肉別1人当たり年間消費量◇
元のページに戻る