海外駐在員レポート 

EUにおける牛乳・乳製品の消費促進活動について (飲用乳を中心として)

ブラッセル駐在員事務所 井田俊二、島森宏夫




1 はじめに

 近年のEUにおける牛乳・乳製品の消費動向は、加盟国別、品目別に差があるも
のの全般的には大きな伸びが見られない状況にある。加盟国では、牛乳・乳製品
の消費促進を図るため国家レベルまたは企業レベルでさまざまな活動を展開して
いる。EUレベルでは、こうした各加盟国の包括的な牛乳・乳製品消費促進活動に
対し支援措置を講じている。本稿では、最近のEUにおける牛乳・乳製品の消費動
向および消費促進活動等について、飲用乳を中心に紹介する。

2 牛乳・乳製品の消費動向

 EUにおける近年の生乳生産は、84年に導入された生乳生産割当(クオータ)制
度の管理の下、安定的に推移している。98年のEUにおける生乳生産量は1億2,245
万トン(前年比0.3%減)で、ほぼ前年並みで推移した。

 牛乳・乳製品年間1人当たり消費量(全脂肪乳換算ベース)は319kg(96年)で、
国別に見るとスウェーデン(453kg)からスペイン(163kg)まで約2.8倍の差の開
きがある。近年の消費動向は、90年(306kg)と比較してわずかに増加しているも
のの、国別の消費動向を見ると、増加と減少が混在している。また、品目別で見
ると、チーズが引き続き増加している一方で、バターおよび練乳はほぼ一定の水
準で推移している(グラフ1)。

◇グラフ1 乳製品年間1人当たり消費量◇

 飲用乳について見ると、98年の販売量(バターミルクを含む)は、2,928万トン
(同0.7%減)で、94年と比較して2.8%減少しており、近年漸減傾向にある。
(グラフ2)

◇グラフ2 EUにおける飲用乳販売量(バターミルクを含む)◇

 また、1人当たり年間牛乳消費量(乳飲料およびヨーグルト等を含む)は表2の
通りである。

 加盟国別(98年)では、フィンランド(185.0kg)やアイルランド(175.0kg)
が多く、イタリア(85.3kg)やドイツ(88.5kg)と比較して約2倍の差がある。近
年の消費動向は、加盟国ごとに差があるものの、フィンランド等一部加盟国を除
いて横ばいまたはわずかに減少している。

 また、乳脂肪タイプ別の飲用乳消費量は表3の通りである。

 乳脂肪タイプ別の飲用乳の消費動向は、加盟国別で大きく異なっている。ベル
ギーやギリシャでは、乳脂肪2.5%超が90%以上であるのに対して、オランダや
フランス等では乳脂肪1〜2.5%が70%以上を占めている。また、フィンランドや
スウェーデンでは、乳脂肪1%未満が約20%に達している。

 以上のことから、EUにおける牛乳・乳製品の消費は次のように特徴付けられる。

・加盟国ごとに牛乳・乳製品の消費習慣(種類、消費方法等)が異なり、消費量
に差があること。

・近年の1人当たり飲用乳消費量の動向は、国ごとに異なるものの急激な増減は
見られないこと。

表1 1人当たり牛乳・乳製品消費量
   (全脂肪乳換算ベース)
re-eut01.gif (5454 バイト)
 資料:EU委員会

表2 1人当たり牛乳消費量
re-eut02.gif (7549 バイト)
 資料: ZMP REVIEW1999

表3 乳脂肪タイプ別の飲用乳消費量(96年)
re-eut03.gif (5686 バイト)
 資料:EU委員会「EVALUATION OF THE SCHOOL MILK MEASURE 
         FINAL REPORT 1999」


3 牛乳・乳製品の消費促進活動に対するEUの支援措置について

(1)背景

 EUでは、慢性化する牛乳・乳製品の過剰生産対策として、84年に生乳生産割当
制度を導入した。この結果、生乳生産量は安定的に推移したため、その後、牛乳
・乳製品需給バランスの改善に向けて大きく動き出したと言える。

 一方、EUは主要な乳製品輸出地域として位置付けられており、輸出、消費等に
よる需給バランスの変動を介入在庫で調整する構図となっている。

 こうした中、EUでは、停滞する牛乳・乳製品の域内消費を促進し、需給バラン
スの改善に寄与するため、92年から牛乳・乳製品の消費促進活動に対する支援措
置を開始した。


(2)規則の概要

 現行のEUの支援措置は、92年にEUにおける牛乳・乳製品の消費促進および市
場拡大に関する理事会規則(EEC2073/92)が定められた。さらに、93年の委員
会規則(EC3582/93)で同理事会規則に関する細則を定めている。この支援措
置は、単年度事業として94/95事業年度から行われ、現在5回目(98/99事業年
度)の事業が実施されている。

(目的および対象とする活動)

 この事業は、停滞する牛乳・乳製品の消費を促進し、EUにおける牛乳・乳製品
の需給バランスの改善に寄与することを目的としている。

 このため、加盟国が実施する牛乳・乳製品消費促進活動は、次のいずれか(複
数でも可)に該当しなければならないとしている。

 ・牛乳・乳製品に関する知識(特に栄養価等)の普及
 ・牛乳・乳製品に関する調査・研究(特に栄養価等)
 ・牛乳・乳製品の消費を促進するためのキャンペーン等
 ・牛乳・乳製品の市場拡大を図るための市場調査

 なお、この活動の対象となる品目は、94/95事業年度は飲用乳のみであったが、
それ以降バター、チーズといった乳製品が含まれることとなった。ただし、飲用
乳主体の活動であることは変わっていない。

(活動内容の要件)

 ・牛乳・乳製品の宣伝に利用するメディアは、最大限の効果が得られるもの
  すること

 ・各地域における牛乳・乳製品の市場および消費の特性を考慮すること

 ・牛乳・乳製品を包括的に取り扱い、特定の企業や商標を対象としないこと

 ・EUの牛乳・乳製品の消費を促進し、特定の加盟国や地域(ただし、特別呼
  称畜産物に関するEU規則に規定される場合は除く)に限定しないこと

 ・EUの資金による活動である旨を表示すること

(期間)

 12ヵ月間以内(ただし、最大3ヵ月の延長可能)

(経費および支出)

 ・EUが100%負担

 ・事業の前払金は、事業予定額の30%まで

 ・事業費に占める一般経費は全体の2%(最大1万ユーロ(108万円:1ユーロ
  =108円))以内

(申請の手続き)

 事業実施主体が加盟国当局に申請書を提出
    ↓
 加盟国当局による予備審査
    ↓
 加盟国当局からEU委員会に申請書を提出
    ↓
 EU委員会(牛乳・乳製品運営委員会)による申請の審査および決定
    ↓
 EU委員会から加盟国当局へ結果の通知
    ↓
 加盟国当局から事業実施主体へ結果の通知


(3)これまでの支援措置の概要

 EU委員会は、事業年度ごとに年次レポートを農相理事会に報告している。これ
までの報告にある支援措置の概要は、次の通りである。

(ア)事業予算

 EU委員会は、予算の範囲内(当該事業単独の予算ではない)において各活動を
選定する。これまで過去5年間(94/95〜98/99事業年度)の事業費総額は、グ
ラフ3の通りである。事業予算の幅は、98/99事業年度の814万ユーロ(8億7,912
万円)から97/98事業年度の1,005万ユーロ(10億8,540万円)である。

◇グラフ3 EUの牛乳・乳製品消費促進事業費の推移◇

(イ)これまでの事業の方策

(目的)

 この事業の目的は、牛乳・乳製品の消費レベルが高い加盟国の消費減少をくい
止め、消費レベルが低い加盟国の消費量を増加させることにより、EU域内におけ
る牛乳・乳製品の平均消費量を増加させることである。このためには、栄養価等
牛乳・乳製品の持つ効果的な特性等をアピールしていく必要がある。

(対象)

 25歳以下(94/95事業年度は15〜25歳)の若年者を第1の対象としている。25
歳以下の若年者が対象となった背景には、幼児期に親等から与えられて身につい
た牛乳を飲む習慣が、成長するに従って失われてしまうという指摘がある。対象
とする若年者が、自発的に牛乳・乳製品を選択し消費する習慣を身につける結果、
今後すべての世代で牛乳・乳製品の消費拡大が図られるとしている。

 また、妊婦、子供、および老人等栄養面で関心の高い層を第2の対象とし、カ
ルシウムやビタミンといった栄養価の側面からキャンペーンを行う。

(テーマ)

 次の点をテーマとして牛乳・乳製品をアピールする。

・栄養価:牛乳・乳製品は、ビタミン、カルシウムといった栄養面で優れており、
 牛乳の摂取不足により栄養面での不足が起こり得ること

・現代的かつ楽しい:牛乳・乳製品は、自然食品であり、現代の食生活に完全に
 適合している。さらに、味および価格面において現代の食生活に充足感を与えている。

(ウ)活動の概要

(94/95事業年度の活動の概要)

@新聞・雑誌、テレビ:ドイツ、イギリス等5ヵ国

 イギリスでは、2種類のコマーシャルと新聞・雑誌の宣伝により、牛乳消費量が
2歳未満の乳児で前年比3%増、2〜4歳の幼児で同5%増と効果が見られた。また、
ドイツでは、牛乳消費量が同4.1%増加および家計消費の増加が見られた。

Aスポーツイベント:フランス等3ヵ国

 スポーツイベントにおいて、牛乳・乳製品の展示コーナーを設け、牛乳の効能
等を紹介した。数千に及ぶイベントで実施され、牛乳に対する関心を高める上で
優れた効果があると評価された。

B総合的なキャンペーン活動:スペイン、ポルトガル

 スペインでは、「牛乳と健康週間」、ポルトガルでは、「ミルクキャラバン」
を設置して31ヵ所の海水浴場でキャンペーンを展開した。その結果、特にスペイ
ンでは95年に牛乳消費量が大幅に増加した。

C科学的情報:フランス

 フランスの栄養研究情報センター(CERIN)で科学的な見地によるデータベー
スを構築し、日々、更新し情報を提供している。

(95/96事業年度の活動の概要)

 15ヵ国が15〜25歳を主な対象として、次のカテゴリーのキャンペーンを行った。

 @若者向け新聞・雑誌:ドイツ等2ヵ国
 Aテレビコマーシャル:アイルランド等3ヵ国
 B新聞・雑誌、テレビコマーシャル:デンマーク
 Cスポーツ等イベントスポンサー:ベルギー等4ヵ国
 Dビデオ、パンフレット、ポスター等:フィンランド等2ヵ国
 E2つの年齢層(12〜20歳および35〜49歳)を対象とした栄養価の情報:
  オランダ
 F科学的見地からの栄養価情報:フランス等2ヵ国
 G宣伝広告、情報を統合した活動:スペイン等2カ国

(96/97事業年度の活動の概要)

 キャンペーンの媒体としてラジオや新聞といった従来からのメディアへの関心
が減少した。ただし、テレビを使った宣伝の割合は高まっており、宣伝のターゲ
ットとする年齢層に対して、より広範な宣伝効果があると評価されている。また、
新たな宣伝媒体としてマルチメディアやインターネット等に対する関心が急速に
高まっている。さらに、各種スポーツイベントを通して消費者に牛乳・乳製品の
消費促進をアピールする手段も大幅に増加した。

 このようなキャンペーンにより期待される効果は次の2点である。

 ・牛乳に対するイメージの転換(若々しい、健康的、ダイナミック)
 ・牛乳を飲む習慣の転換(家庭外での消費)

@スポーツイベント:ベルギー、フランス等7ヵ国

 数千のイベントで牛乳とスポーツを関連させるとともに、若者の興味を引くよ
う製品を展示し、牛乳の効能をアピールした。その結果、牛乳・乳製品に対する
新たなイメージや消費パターンを生み出す効果があったとして、卓越した手法と
の評価を得た。

 フランスでは、ヨット競技を後援し、牛乳のキャンペーンを組み入れ、「牛乳
・乳製品=ピュアセンセーション」といったコンセプトの下、「牛乳・乳製品=
ヨット」のイメージを若者にアピールした。4千のヨット教室で登録者(80万人
以上)を対象に、10万回以上の試飲会が行われた。

 ドイツでは、漫画のキャラクターを使ったり、スポーツイベントにおける試飲
会等牛乳の栄養価をアピールした。この結果、18歳未満の子供を持つ家庭の消費
量が年間4リットル増加したと報告している。

 デンマークでは、サッカースクールなどで、「1日0.5リットルの牛乳を」とい
うスローガンにより、牛乳は若者のスポーツ飲料であるというイメージづくりを
展開した。この結果、牛乳の消費量が前年比2%増加した。

A宣伝広告、情報を統合した活動:スペイン、ドイツ等5ヵ国

 スペインでは、「バルセロナ牛乳、健康週間」を開催し、展示、情報提供、討
論会、試飲会を行い6万人が参加した。また、これに関連して510万人に小冊子や
教育資材を提供するとともに、テレビのコマーシャルを通じて280万人に牛乳・
乳製品をアピールした。

B科学的情報:フランス

 CERINで科学的な見地によるデータベースを構築し、日々、更新し情報を提供
している。また、専門家や科学者との相談も増加している。

(97/98事業年度の活動の概要)

 すべての加盟国(15ヵ国)で、15〜25歳の若者を対象としたキャンペーンを実
施。ベルギーをはじめとした10ヵ国では、前年に引き続き同様のコンセプトを継
続または拡大しキャンペーンを実施している。また、いくつかの加盟国では、特
別イベント(ベルギーにおけるヨーロッパ学生の集いや、デンマークにおけるサ
ッカー世界大会等)といった新たな試みが実施された。主に、次の4つのキャン
ペーンが行われた。

 @テレビおよび新聞:アイルランド等13ヵ国

 Aスポーツをはじめとしたイベント(ミルクデー、ミルクキャラバン、ジュニ
  アトライアスロン等若者を対象とした競技):ベルギー等7ヵ国

 B宣伝、広告、情報、スポーツ等イベントを統合したキャンペーン:イギリス
  等4ヵ国

 C牛乳の栄養価に関する情報提供:フランス等2ヵ国

(過去4年間(94/95〜97/98事業年度)の事業費の内訳)

 各事業年度の事業費の配分を見ると、メディアを通じた活動が最も大きい。特
にテレビが一番大きく、新聞は減少している。また、インターネット等新たな手
段による活動が増加している。一方、スポーツ等のイベントを通じた活動が増加
しており、全体の事業費の約20%を占めている。

表4 事業費の内訳
re-eut04.gif (4881 バイト)
 資料:EU委員会


4 主な加盟国の牛乳・乳製品の消費促進活動

(1)イギリス

(ア)98/99事業年度の牛乳・乳製品の消費促進活動

 イギリスにおける包括的な牛乳・乳製品の消費促進活動は、ナショナル・デイ
リー・カウンシル(NDC)で実施している。

 97/98事業年度のNDCの活動は、牛乳に対する消費者のイメージの刷新を図り、
若年層(5〜15歳)の牛乳消費量を増加させることを目的とした。その結果、1人
当たりの牛乳消費量は、6〜10歳で前年比5.4%増、また、そのほか10代の消費量
が前年並みを維持するといった効果が見られた。この宣伝効果は、宣伝費用がけ
た違いに大きいソフトドリンクと比較して非常に効果的であったと評価されてい
る。

 98/99事業年度の活動は、基本的に前年度の内容を継続している。主な活動は、
ラジオによる宣伝、若者向け雑誌への広告の掲載、スポーツイベントへの協賛、
インターネットの開設などである。

 活動の目的は、牛乳に対するモダンなイメージの確立および若い女性に対して
牛乳の持つ栄養面での効果の普及等を通じて、牛乳消費の拡大を図ることである。

 なお、活動の対象は、イングランド、スコットランドおよびウエールズでは8
〜16歳、北アイルランドでは11〜15歳の若者を対象としている。

 活動の具体的な内容および事業費は、次の通りである。

(活動の内容)

@イングランド、スコットランドおよびウエールズ

 ・ラジオによる宣伝:99年11月〜2000年6月に30秒間の宣伝(8局:4,680回)
 ・雑誌の広告:若い女性向け雑誌(12誌:26回)
 ・インターネット:教育用キットの設置
 ・スポーツイベント:ジュニアトライアスロンなど15のスポーツイベントに協賛

A北アイルランド

 ・テレビスポーツの放映

表5 イギリスにおける98/99
  事業年度の事業費内訳
re-eut05.gif (5127 バイト)
 資料:National Dairy Council

(イ) 牛乳・乳製品の宣伝広告

 イギリスにおける牛乳・乳製品の宣伝広告費は、次の通りである。97/98年の
包括的な飲用乳の宣伝広告費は72万ポンド(1億2,744万円:1ポンド=177円)で
牛乳・乳製品全体の約1.5%にすぎない。また、93/94年と比較すると大幅に減
少(前年度比91%減)している。主な要因は、「ダンシングボトル」というキャ
ンペーンが終了したためである。特定製品を対象とした宣伝広告費も減少してい
るが、これは、練乳および粉乳を対象とした広告宣伝が減少したためである。

 これに対して、消費量が増加しているチーズやヨーグルト、フレッシュチーズ
の宣伝広告費は増加している。

表6 イギリスにおける牛乳・乳製品の宣伝広告費
re-eut06.gif (4802 バイト)
 資料:NDC「Dairy Facts and Figures 1998」

 また、飲用乳と消費面で競合する飲料の宣伝広告費は次の通りである。牛乳の
宣伝広告費は、93/94年には炭酸飲料に次いで多かった。しかし、炭酸飲料や果
汁飲料に対する宣伝広告費が増加する一方で牛乳は減少しているため、97/98年
の牛乳の宣伝広告費は、炭酸飲料の2.9%にすぎない。

表7 イギリスにおける飲料種類別宣伝広告費
re-eut07.gif (3598 バイト)
 資料:NDC「Dairy Facts and Figures 1998」


(2)ベルギー

(98/99事業年度の牛乳・乳製品の消費促進活動)

 ベルギーでは、事業実施主体として、フランドル農業市場流通ボード:Vlaamse 
Dienst voor Agro-Marketing(V.L.A.M.)が北部地域で、また農業園芸促進地方
ボード(ワロン地方):Office Regional de Promotion de l'Agriculture 
et l'Horticulture(O.R.P.A.H.)が南部地域で牛乳を中心と消費促進活動を行っ
ている。

 VLAMは、年間約20万ユーロ(約2,160万円)の予算で牛乳を対象とした消費拡
大活動を展開している。活動の対象は、9〜17歳の若者である。

 主な活動の内容は、年に1度牛乳に関する折り込み新聞(写真)を制作し、こ
の地域にある250(この地域の全小・中学校数は3800)の小中学校を対象として
新聞を直接配布するとともに、新聞の折り込みとして約100万部配布する。また、
年に一度「MMMM MEL」と称したイベントを開催して、会場では、綱引きなど
遊びを交えて牛乳の効能などを紹介している。このイベントには、2万〜2万5千
人の参加者がある。このほか、牛乳をデザインしたバックやビニールマットな
どを制作し牛乳のイメージアップに役立てている。ベルギーでは、テレビやラ
ジオ等による宣伝広告は実施していないが、これらの活動の結果、牛乳の消費
量が増加したと事業効果を評価している。

 なお、ベルギーの南半分を対象とするORPAHでも、VLAMとほぼ同様の内容の
活動を行っている。
jommekes.gif (101836 バイト)
【V.L.A.M制作のPR用新聞。
紙面左下には、EU規則に基づく
事業であることを表示している。】

(3)フランス

(牛乳・乳製品の宣伝広告)

 97年の牛乳・乳製品宣伝広告費は19億1千2百万フラン(325億4百万円:1フラ
ン=17円)、93年と比較して52%増加している。ただし、この宣伝広告費の大部
分は特定ブランド対象で、包括的な牛乳・乳製品を対象としているものはわずか
である。また、この宣伝広告費全体のうち牛乳の比率は、10%と小さい。

 また、牛乳と競合関係にある飲料の宣伝広告費は、炭酸飲料で牛乳の2倍以上
となっている。また、宣伝広告の手段は、テレビが最も大きく、炭酸飲料、ジュ
ースとも約70%を占めている。

表8 フランスにおける牛乳・乳製品の宣伝広告費
re-eut08.gif (3246 バイト)
 資料:CIDIL/SECODIP
    EU委員会「EVALUATION OF THE SCHOOL MILK MEASURE 
         FINAL REPORT1999」

表9 フランスにおける飲料の宣伝広告費の内訳(97年)
re-eut09.gif (2548 バイト)
 資料:SECODIP
	EU委員会「EVALUATION OF THE SCHOOL MILK MEASURE 
         FINAL REPORT1999」


5 EUにおける学校向け牛乳補助の動きについて

 EUでは、77年からEUにおける学校向け牛乳補助制度を導入した。保育園・幼
稚園から大学までを対象として、学校向け牛乳消費を拡大することを目的として
いる。

 EUでは、現在、この制度の見直しを検討している。EU委員会では、99年2月、
同制度に関するレポート「EVALUATION OF THE SCHOOL MILK MEASURE」を公表
した。このレポートでは、同制度の目的としている牛乳消費の促進および対象と
する学童等の栄養・健康維持を達成するための事業を一層効率的に実施するよう
指摘しており、これを受けてEUでは学校向け牛乳補助制度の改革を検討している。


6 おわりに

 スウェーデンなど一部の加盟国では、子供から老人に至るまで幅広い年齢層で
牛乳・乳製品が消費されると言われている。しかしながら、一般的に幼少時に家
庭や学校で身に付けられた牛乳を飲む習慣は、成長するに従って失われてしまう
ケースが多いと言われている。

 EUで支援している牛乳・乳製品の消費促進活動は、25歳までの若者を対象とし、
牛乳に対する関心を喚起し、すべての世代で牛乳を飲む習慣を継続させていくこ
とを目的としている。

 若者の牛乳離れは、ソフトドリンクをはじめとする競合飲料の大規模な宣伝の
影響があるとされる一方、健康面における効能等牛乳に対する消費者の知識が依
然として十分でないことも指摘されている。このため、牛乳・乳製品の消費促進
活動の中心は、若者が集まる場でいかに牛乳のイメージを浸透させ、牛乳が本来
有する効能等を再認識させるかに集約される。昔からの製品に対する需要の掘り
起こしだけに、消費促進活動には長期的な継続性が必要であると思われる。

 一方、EUにおける今後の生乳生産は、99年3月に採択された共通農業政策
(CAP)改革の決定に従い、今後、生乳生産クオータの増枠が予定されており、
それに伴う生乳の増産が見込まれている。99年12月にEU委員会が公表した需給見
込みによると、中期的に生乳生産増加分が、バター等の生産に振り向けられ、そ
の結果、乳製品の在庫数量が徐々に増加していくと見込んでいる。

 こういった状況下、牛乳・乳製品の域内需要の掘り起こしは、牛乳・乳製品需
給バランスの改善に向けて重要性を増していくものとみられる。

(別表)97/98事業年度の事業実施団体および事業費
re-eut08.gif (3246 バイト)
 資料:EU委員会「Evaluation of The School Milk Measure Final Report 1999」
  注:15ヵ国から32事業の申請があり、そのうち上記の20事業が選定された。

98/99事業年度の事業実施団体および事業費
re-eut11.gif (8952 バイト)
 資料:EU委員会「Evaluation of The School Milk Measure Final Report 1999」
  注:15ヵ国から36事業の申請があり、そのうち上記の19事業が選定された。


(参考文献)

1 .「Evaluation of The School Milk Measure Final Report 1999」
   European Commission

2 .「Communication from The Commission to The Council:
   Action program to promote milk consumption in the community
    and expand the markets for milk and milk products 1995/96,
   1997/98 and 1998/99 milk year」European Commission

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