EU委員会、食品の安全性に関する白書を公表


食品の安全性の確保がEU委員会の最重要課題

 EU委員会は1月12日、EUにおける食品の安全性に関する白書を公表した。この
白書は、高水準の食品安全基準を確保し、食品の安全性に対する消費者の信頼を
回復することを目的として、今後の施政方針を提案している。

 EUでは、近年、食品の安全性に関する消費者の関心が急速に高まっている。特
に、96年のイギリスにおける牛海綿状脳症(BSE)問題、99年のベルギーにおけ
る鶏肉等のダイオキシン汚染問題およびフランスのおける家畜飼料への汚泥混入
問題は、社会的に大きな関心を集めた。これらの問題は、EU各国に大きな経済的
損失をもたらすと同時に、食品の安全性に対する消費者の信頼を失墜させる結果
となった。さらに、これらの問題により現行のEU関連諸規則の欠陥が露見したと
も言える。

 このため、昨年9月に新たに発足したEU委員会は、食品の安全性の確保を最重
要課題の1つとして位置付け、改善策を検討してきた。


欧州食品庁の創設を提案

 今回の白書では、この対策として次のような方策が提案されている。

 第1に、2002年から独立機関として、次の業務を行う欧州食品庁を創設する。

・多面的な食品安全性に関する科学的なアドバイス
・緊急問題発生時の迅速な対応システムの運用
・食品の安全性と健康に関する消費者とのコミュニケーションおよび情報提供
・加盟国の食品の安全性に関する機関との連携等

 ただし、この提案では、同機関に法的権限は付与されないこととなっている。
欧州食品庁の創設については、2000年4月までに加盟国政府、関係業界、消費者
など幅広い層からの意見を集約し、2000年9月までにEU委員会が正式な提案を行
う予定である。


食品安全性に関する現行規則を大幅に見直し

 第2に、現行の食品安全性に関する諸規則を大幅に見直すことを提案している。
見直しが必要とされた規則は84にも及び、その対象は、家畜飼料、家畜衛生、動
物愛護、食品衛生や遺伝子組み換え(GM)食品を含む新規食品、食品添加物、
食品香料および包装など広範囲にわたっている。この見直しは、食品の安全性に
関する規則を農家から消費者の食卓に至るまで包括的にとらえ、理解しやす
く一貫性があり、かつ、柔軟性のあるものにすることを目的としている。例えば、
家畜飼料の原料に関して使用制限を定めた規則については、現行では使用できな
い物質のリストが提示されているが、規定をより明確にするため、使用可能な物
質のリストを提示するなどの見直しが盛り込まれている。


食品安全性に関する規則の実施管理体制を改善

 第3に、各国が行う食品安全性に関する規則の実施管理について、EUレベルの
枠組み作りを提案している。EU委員会と各国が共同して枠組みを作り、食品安全
管理体制の改善および食品安全基準の向上を図る。


消費者への情報提供

 第4に、白書に盛られた活動で食品安全基準が改善されるということが理解さ
れるよう、消費者への十分な情報提供が不可欠であるとしている。また、消費者
が食品安全政策決定に参加できるよう情報公開に努めることとしている。消費者
には、食品の特徴、成分等の重要事項に関してより良い情報提供が必要である。
このため、現行規則を基礎とした食品表示に関する提案を行う予定である。


国際的側面に配慮

 第5に、EUは食品の世界最大の輸入・輸出国であるため、貿易相手国に対して、
白書で提案された活動計画をよく説明し、理解を得ることが必要としている。

 見直し対象となったすべての規則は、2001年までにEU委員会から提案され、遅
くとも2002年までにEU理事会、EU議会で採択される予定である。

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