農産物市況の低迷で負債問題が表面化(アルゼンチン)


国際市場の競合激化で、生産者は有利な融資制度を要望

 アルゼンチンでは、91年の兌換(だかん)法導入以降、経済の安定化に伴い農
林漁業融資額が増加している。
 中でも、穀物生産者は、@国際市場において、農業補助金を受けている国々と
の競争を強いられていること、A競争相手国である先進国の生産者は、より低い
金利での資金調達が可能であること、B業界として、生産技術への投資増加を期
待していることなどから、より条件が有利な融資制度に対する要望が強い。

 しかし、同国では、近年の農産物国際市況の低迷などによる生産者の経営状況
の悪化により、負債問題が一層表面化している。


経営形態別の負債シェアは、穀物と畜産の複合経営がトップ

 アルゼンチン農牧水産食糧庁によれば、99年6月末時点における農林漁業部門
の金融機関に対する負債額は、約65億ペソ(約6,890億円:1ペソ=106円)に達
するとみられている。これ以外にも、農林漁業部門は生産財やサービスを提供す
る企業などに対しての負債額が約30億ペソ(約3,180億円)あると言われている。

 96年における農林漁業部門の経営形態別の金融機関に対する負債状況のシェア
を見ると、主に穀物と畜産の複合経営が全体の42%と最も多く、次いで、穀物お
よび油糧種子経営が15%となっている。肉牛繁殖および肉牛肥育経営は11%であ
る。林業、漁業部門については、それぞれ1.3%、1.6%と低水準である。


金融機関別では国立銀行がトップ、最近は民間銀行の伸びが顕著

 99年6月末時点における農林漁業部門の負債額に占める金融機関別シェアは、
国立銀行が全体の45%と最も多く、民間銀行が37%、州立および市立銀行が17.9
%、その他の金融機関が0.1%となっている。93年12月末時点のシェアは、国立
銀行が43%、民間銀行が29%、州立および市立銀行が27%、その他の金融機関が
1%であり、93年と99年の比較では、民間銀行に対する負債額の増加が大きく、
その中でも特に外資系銀行の伸びが著しい。

農家経営の安定に向け政府は支援措置を実施

 近年、政府が講じた金融支援策の1つとして、99年8月に国際農牧工業展でメネ
ム前アルゼンチン大統領が発表した、穀物の作付け・収穫に対する8億ペソ(8
48億円)の融資枠の設定と政府による3%の金利補助が挙げられる。

 これについては、農牧水産食糧庁が2度の入札を実施し、官民の銀行を合わせ
約5億ペソ(約530億円)の融資が決定している。この入札結果を見ると、国立銀
行のシェアが40%と最も多く、この入札金利は13.5%であった。また、99年12月
に発足した新政権は、市況下落の著しかった小麦に対して、1億ペソ(106億円)
の追加融資枠の設定と3%の金利補助を決定した。


負債総額の約2割が不良債権化とも

 政府がこうした金融支援策を打ち出す一方で、農林漁業部門の負債は膨大な額
に達し、99年6月末時点における負債総額のうち、約2割は返済が滞っているとさ
れ、経済公共事業省は危ぐの念を表している。

 今後、銀行業務の健全性を図る観点からも、最大の貸出銀行である国立銀行を
中心に融資査定が一層厳しくなれば、特に中小の生産者にとって資金調達がより
困難なものになるとみられている。

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