加速する豪州乳業界の再編


合併により豪州最大の乳業メーカーが誕生か

 大手乳業メーカーのボンラック・フーズ社とオーストラリアン・コープラティ
ブ・フーズ(ACF)社の合併計画が、1月18日、公表された。合併が実現した場合、
売上高で25億豪ドル(1,775億円:1豪ドル=71円)を超え、生乳供給者数で全豪
の半数にも上る豪州最大の乳業会社が誕生する。加工原料乳をはじめとする生乳
価格支持制度の改革を見越し、生き残りをかけた乳業会社の再編は今後、一層加
速しそうだ。

 両社は、ともに酪農協を母体とする。ボンラック社は最大の生乳生産州である
ビクトリア州を拠点とし、年間売上高は12億豪ドル(852億円)。バターやチー
ズなどの乳製品を販売の主力としており、近年は輸出にも力を注ぎ、売上げの約
半分を海外市場に依存する。

 一方のACF社は、大消費地を抱えるニューサウスウェールズ州を拠点とし、ク
インズランド州にも傘下の酪農家を抱える。年間売上高は13億豪ドル(923億円)、
豪州の3大飲用乳メーカーの1つであり、国内の牛乳販売シェアは35%に上る。飲
用乳のほかには、ヨーグルトや乳製品デザートなど、いわゆるフレッシュものの
シェアが大きい。


合併は生産者の投票により決定

 合併計画についてボンラック社のヒル会長は「国内では、今年6月末で加工原
料乳の価格支持制度が打ち切られることや、飲用乳価格支持制度の見直し問題に
直面する一方、世界的な乳業再編などから国際市場での販売競争は激化傾向にあ
るなど、豪州乳業界は転換期に突入している」とした上で、「われわれは、出資
者である酪農家に利益となる(合併によってもたらされる)すべての可能性を徹
底的に分析する」と述べている。両社の発表によると、それぞれ6名を代表とす
る委員会を設置し、合併の実現性や将来的な可能性について今後2ヵ月間にわた
って検討する。最終的な判断は、それぞれの組織の出資者である酪農家の投票に
よって下される。

 ACF社は、既に昨年8月に、イタリア資本の乳業会社で、国内飲用乳市場にお
いて24%のシェアを持つパーマラット社から吸収合併のオファーを提示されてい
る。これまでの発表では、パーマラット社のオファーについては、ボンラック社
との合併案とは切り離して平行的に検討されるとしている。 ACF社は、株式公
開などを含む資本再編計画も検討しており、今後、パーマラット社のオファー、
資本再建計画、そしてボンラック社との合併という順で、生産者による票決が予
定されている。


相互補完が最大の合併メリット

 現在までのところ、パーマラット社がイタリア資本であることや、酪農協を母
体とし組織的に類似性が強いことなどから、ACF社の相手先はボンラック社との
見方が強い。また、飲用乳を中心とし国内市場に強いACF社と、乳製品を中心に
海外市場に強いボンラック社の組合せは、合併による相互補完のメリットも大き
いとみられている。 

 今年6月末には加工原料乳の価格支持制度が打ち切られ、同時に生乳価格支持
制度の抜本的な改革が予想される環境下で、飲用乳メーカーを中心とした業界再
編が過熱してきた。3大飲用乳メーカーの1つで、国内飲用乳市場の33%を押さえ
るとされるナショナル・フーズ社は、当初視野に入れていたACF社との合弁から
撤退を表明すると同時に、ニュージーランドへの進出を検討しているとされる。

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