カナダの乳価制度問題、WTO提訴国と合意


米・NZの両提訴国と合意

 カナダ政府は99年12月23日、世界貿易機関 (WTO)上級委員会が同年10月、同
国の乳価制度を輸出補助金と認定し、WTO協定違反とした裁定への対応策につい
て、同国を提訴していた米国およびニュージーランドと合意した。

 WTO上級委員会は昨年10月13日、米国・ニュージーランドの提訴を受けて争わ
れてきたカナダの乳価制度について、輸出補助金と認定し、WTO協定違反とした
WTO紛争処理小委員会(パネル)の判断を支持する旨の裁定を下した。これを受
けて、カナダ政府は裁定結果への対応を迫られていた(これまでの経緯について
は、本誌99年6月号および同年12月号「トピックス」参照)。

 カナダの乳価制度は、国内向けのほか、輸出向け主体のスペシャルクラスを設
定したもので、実質的な二重価格制度となっている。乳業者は国内向けに比べて、
輸出向けには安い乳代を支払うことから、この制度は実質的に輸出補助金に相当
し、WTO協定に違反するとして、米国はWTOに提訴し、後にニュージーランドも
これに同調して提訴に加わった。米国は、この制度が輸出補助金に相当すれば、
カナダの輸出補助金の上限を過去3年間で1億6千万ドル(約169億円:1ドル
=106円)超過していると主張していた。


合意内容はWTO協定との整合性に配慮

 今回の合意の下で、カナダ政府は、乳製品に関する輸出補助金の上限順守に向
けた措置に直ちに着手することとされており、補助金付きとみなされるチーズの
輸出量については、今販売年度(99年8月1日〜翌年7月31日)の上限が20,433ト
ンに設定された。このため、2000年3月31日をもってチーズ向けのスペシャルク
ラス許可証の発行を停止するなど、今販売年度終了時までに輸出補助金を大幅に
削減していくこととしている。

 また、カナダ政府は、米国およびニュージーランド政府と共同で、乳製品の輸
出補助金について、段階的かつ透明な削減スケジュールを作成していくこととし
ており、2000/01年度にはWTO協定上認められた乳製品輸出補助金の上限を完全
に順守することとしている。この結果、補助金付きとみなされるチーズの輸出量
は、9,076トンが上限となり、これまでの半分以下に削減されることとなる。

 一方、WTO上級委員会では、個人消費用としてカナダ国内に持ち込める飲用牛
乳の価額制限(1回につき20カナダドル(1,480円:1カナダドル=74円))に関
しても、WTO協定違反との裁定が下されていたが、これについてカナダは、2000
年2月1日時点で撤廃することで合意した。


米側は合意を評価

 今回の発表について、バシェフスキー米通商代表は、カナダの輸出補助金の削
減で米国の酪農家は恩恵を受けることができるだろうと述べるとともに、WTOと
いうルールに基づく問題解決システムの重要性を強調した。

 また、この案件について、米国政府に強く働きかけてきた全国生乳生産者連盟
(NMPF)などの関係団体も、一様に満足の意を表明するとともに、乳製品貿易
政策のルールに明確さを与える意義深いものとのコメントを発表している。

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