◇絵でみる需給動向◇
EUの牛肉価格が上昇傾向で推移する中、EU委員会は、2000/01年度(2000年 7月〜2001年6月)の域内における肉牛供給頭数予測を発表した。これによると、 EU全体での供給頭数は2千809万頭と、前年度に比べ頭数にして20万頭、率にして 1%の減少を予測している。EUの肉牛供給数量は、過去に発生した牛海綿状脳症 (BSE)問題に対する早期出荷の促進対策や、農家戸数の減少、また、畜産に対 する環境問題など、さまざまな要因が飼養動向に影響を与えた結果、96/97年度 を境に減少傾向で推移している。 ◇図 EUにおける肉牛供給頭数の推移◇
EU域内における2000/01年度の肉牛供給頭数を国別に見ると、96年に肉牛飼養 頭数減少の最大の原因となるBSE問題が発生したイギリスでは、その後、BSEの発 生が徐々に収束している状況を受け、牛肉需要が回復しつつあることから、供給 頭数は増加すると予測している。また、EU最大の肉牛供給国フランスや、生産、 消費とも拡大が伝えられるイタリアでも、イギリス同様、増加を見込んでいる。 一方、フランスに次ぐ供給国であるドイツについては、他のEU加盟国同様、牛 肉消費は回復しつつあるものの、雌牛の飼養頭数減の影響により8万頭を上回る 数の供給頭数の減少を予測している。このほかでは、昨年来、飼養頭数の伸びを 上回る水準で生体牛輸出と牛肉生産を行ってきたアイルランドや、オランダ、ス ペインなどの供給減が予測されている。 ◇図 肉牛の国別供給予測と増減率(2000/2001年度)◇
この様に、域内における肉牛供給頭数の減少が予測されているが、牛肉など食 肉に対する需要は、年々高まりを見せている。2000年8月のEU牛肉平均価格(参 考価格)は、前月比1.1%高の100kg当たり136.5ユーロ(約1万3,650円:1ユーロ =100円)と、8ヵ月連続して上昇している。これは、肉牛供給頭数の減少に加え、 食肉需要の回復も大きな要因と言える。フランスの統計資料によると、EUにおけ る1人当たりの牛肉消費量は、99年では年間19.9kgであり、97年に比べ5%近い増 加を見せている。また、食肉全体で見ても6%弱の増加となっており、食肉に対 する確かな需要の回復がうかがえる。 肉牛供給頭数の減少、食肉需要の回復などを背景に、牛肉の価格は、しばらく 堅調に推移するものとみられる。
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