◇絵でみる需給動向◇
タイ農業協同組合省の公表した、バンコクにおける5月の鶏肉の卸売価格(中 抜き)は、前年同月比15.2%安の1kg当たり33.70バーツ(約91.0円:1バーツ= 2.7円)となった。鶏肉の卸売価格は、好調な輸出を受けて上昇傾向で推移し、 99年7月には42.07バーツ(約113.6円)となっていた。しかし、この堅調な価格動 向が生産過剰を誘発したことから、その後急落し、99年9月には29.84バーツ(約 80.6円)と、2ヵ月で約29%も下落した。このため、タイ政府による市場介入が 実施されることとなった。この結果、卸売価格は2000年2月に一時39.90バーツ (約107.7円)まで回復したものの、生産過剰の状態が続いていることから、国 内の需給は緩んでおり、再び下落傾向に転じている。なお、今年6月の卸売価格 (速報値)は、1kg当たり32.60バーツ(約88.0円)と前年同月比21.7%安の大幅 な低落となっている。 一方、バンコクにおける5月の小売価格は、前年同月比2.6%安の1kg当たり 48.60バーツ(約131.2円)と、ほぼ前年水準で推移している。小売価格は、96年 には1kg当たり55バーツ(約148.5円)を超えて推移していたものの、97年以降は ほぼ50バーツ(約135円)前後で安定的に推移している。 今後の予想として、生産者業界では、ひなのふ化羽数は、5月が前年同月比2.9 %減の約7千7百万羽となっているなど、あまり減少していないことや、鶏肉の消 費量が昨年と比べ3割程度減少しているとの感触から、バンコクにおける卸売価 格は、現在よりもさらに安くなるのではないかとしている。 ◇図 タイにおける鶏肉価格の推移(バンコク市場)◇
このような国内市場に加え、国外からも価格を引き下げる要因が持ち込まれよ うとしている。農業協同組合省畜産振興局は、在タイ米国大使館から、現在40% と設定されている鶏部分肉の関税率を、20%に引き下げてほしいとの要望があっ たことを明らかにした。畜産振興局では、既に鶏肉の市場が供給過剰な状況とな っていることに加え、国内産より安価な鶏肉が大量に国内市場に持ち込まれるこ とは、養鶏産業に大きな影響を及ぼすとして、この要望を拒んだとしている。し かし、米国側からは、この問題について引き続き協議をしたいとの要請があると され、今後の動向が注目されている。 一方、タイ輸出養鶏農家協会は、先に中国が安価な米国産鶏肉を輸入して、加 工後に日本に輸出した事例を取り上げ、東南アジア諸国連合(ASEAN)のメンバ ーが安価な域外の鶏肉を輸入して、加工後にタイに輸出するという、中国の場合 と同様の状況が発生する事態を憂慮し、調製品などの原材料の原産国表示に関す る規定を設けるべきであると、政府に提案している。政府はこれを受け、EUにお ける制度調査をはじめ具体的な対応をとるなど、重要な事項であるとの認識も示 しており、今後の動向が注目されている。
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