ワシントン駐在員事務所 渡辺 裕一郎、樋口 英俊
手前は、9月初めに生まれたばかりの 子牛。この農場での子牛生産は、春先に 種付け、秋に子牛を得るものと、夏〜秋 に種付け、春に子牛を得る2つのパター ンで行われている。種付けはすべて自然 交配で行われており、約30頭の雌牛に対 して1頭のまき牛が約60日間放牧される。 |
||
肉牛のほとんどは、この地域で主流と なっているアンガス種。写真は共に種雄 牛だが、子牛のころから、手渡しで飼料 を食べさせるなどペットのように育てら れてきたため、性格はとても穏やか。左 の牛の後部に見られる三角の印は、バー ジニア州のアンガス牛プログラムに認定 されたことを示すもの |
ひとくちメモ 米国の肉用牛繁殖経営体数は84万3千戸で、うち肉用経産牛の頭数が100頭未満 の経営体が約半数を占めている。繁殖経営は、ほぼ全米で見られるが、その中心 は南北ダコタ州からテキサス州、ミズーリ州などにかけての米国中央部である。 今回訪れたバージニア州を含むアパラチア地帯にも、小規模ながら多くの経営体 が存在し、オクラホマ州やテキサス州などのフィードロットへ肥育素牛が供給さ れている。今回は、ワシントンDCに隣接するバージニア州のブルーリッジ・マ ウンテン地域に位置する周年放牧による肉用牛繁殖経営体を紹介する。
草地面積は約800エーカー(約324 ヘクタール)で、牧区は約20に分けら れている。牧草はホワイト・クローバー、 ブルーグラス、オーチャードグラスなど の混播。昨年は厳しい干ばつで土の表面 が露出するほどの被害を受けたため、飼 養頭数を減らさざるを得なかった。しか し、今年の夏は冷涼で、降雨にも恵まれ たことから、牧草の成育状況は良好との こと |
||
カルシウムなどのミネラル、塩分が含 まれた粉末状の補助飼料を給与する容器 が要所に配置されている。右に立つのは、 この農場のマネージャーであるジェリー ・ファイル氏。同氏を含めて3人の労働 力で約200頭の牛を管理する。 |
くぼ地に設けられた牛の給水場所。連邦政 府の環境規制により、両側には、ふん尿によ る水域の汚染を防ぐため、クリークに牛が入 り込まないよう柵が張り巡らされている。牛 が水を飲んだ後も滞留しないよう、日陰を提 供することになる周りの木々が取り除いてあ るほか、ぬかるみにならないように砂利を引 くなどの工夫が施されている。 |
|
放牧地内に置かれた冬季給与に備えたロールベ ール乾草。野ざらしとなっているが、ロールの内 側はほとんど劣化しないとのこと。周辺には電気 牧柵が張られている。 |
||
ブルーの耳標は3段書きとなっており、 上からそれぞれ父牛、本牛、母牛を示す 番号が記入されている。雌牛は、30頭 程度の牛群に分けて管理されており、子 牛は、約7ヵ月齢(約230〜250kg程度) で地元の家畜市場へ出荷される。 |
肉牛の集合柵。これを利用して雌牛をほ定 し、妊娠鑑定や各種予防接種などを行う。 |
元のページに戻る