◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は、9月2日から今年に入り8回目となる脱脂粉乳に対する輸出補助金 の引き下げを実施した。輸出補助金の引き下げは、8月から9月にかけて4週連続 して行われ、この間の削減率は65%と大幅なものになっている。現在の輸出補助 金額は、100kg当たり25ユーロ(約2,500円:1ユーロ=100円)と、ピークであっ た99年9月との比較で78%もの削減となった。引き下げの背景には、EUの財政事 情とともに、急騰する域内価格に直面して、域内への供給量の確保が念頭にあっ たものとみられている。 一方、脱脂粉乳など乳製品生産のカギを握るEUの生乳生産量は、天候不順によ る放牧の遅れや一部地域での干ばつなどにより、2000年上半期の実績で昨年をわ ずかに下回るものと予想されている。EU最大の生乳生産国であるドイツやフラン スでは、前年同期並みの実績を確保できたものの、イギリス、オランダ、イタリ アなど中位生産国での減少が影響している。 EUの生乳生産量( 1 〜 6 月) 資料:ZMP 注1:2000年の数値は暫定値 2:ベルギーの数値にはルクセンブルクを含む
生乳生産が減少傾向で推移し、飲用乳生産も減少する中、2000年1〜5月の乳 製品生産量は、脱脂粉乳などが減少する反面、チーズ、全粉乳が順調な増加を見 せている。特に、チーズ生産は、脱脂粉乳などと比べた利益率の高さを背景に、 加工食品向け需要など域内消費の顕著な伸びを受けて増加傾向で推移している。 このため、原料乳供給は脱脂粉乳やバター生産向けから、チーズや全粉乳生産向 けに移行しつつある。 EUの乳製品生産量( 1 〜 5 月) 資料:ZMP 注:2000年の数値は暫定値
脱脂粉乳の国際価格は、乳製品の世界的需要の回復などを受けて、依然として 上昇を続けている。指標価格の1つとなるドイツの工場渡し価格は、7月に5.11マ ルク(約261円:1マルク=51円)/kgを記録し、過去最高であった88年の水準に 近づきつつある。また、バターについても、販売推進政策や生産の減少などによ る在庫の減少を受けて、価格は上昇に転じている。乳製品に対する世界的な需要 が高まる中で、現在のところ乳製品供給が可能な地域はEUが中心となっており、 輸出補助金の引き下げによる供給の変動があったとしても、オセアニアからの供 給が始まるまでの間、EUにおける乳製品の価格動向は、ここしばらく堅調に推移 するとみられている。しかし、今後の価格動向によっては、価格上昇に伴う消費 の落ち込みや品目間の大幅な移行など、需要面への不透明な要素が含まれている ことも確かである。 ◇図 主要乳製品価格の推移(ドイツにおける参考価格)◇
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