アルゼンチンで口蹄疫問題が発生


パラグアイから不法輸入された牛が発端

 今年5月に国際獣疫事務局(OIE)総会で口蹄疫ワクチン不接種清浄国に認定さ
れたアルゼンチンで8月2日、牛の口蹄疫問題が発生した。農畜産品衛生事業団
(SENASA)の公式発表による状況は次の通りである。

 8月2日、パラグアイとの国境に近いアルゼンチン北部フォルモサ州クロリンダ
地区の共同農場において、不法輸入された牛10頭が確認された。この牛は、衛生
証明書がないことから殺処分の対象となったが、血清検査の結果、10頭のうち4
頭に口蹄疫の抗体の陽性反応が確認された。問題の発端となった牛が不法輸入さ
れたのは7月22日で、この牛と接触したおそれのある牛について検査した結果、
現時点(8月25日)までに口蹄疫の抗体陽性反応が確認されたのは次の15頭であ
る。

・不法輸入された10頭(去勢牛)の牛のうち4頭

・不法輸入された牛と接触した可能性のある同農場で飼育されている82頭のうち
 8頭

・同農場から出荷された4頭の雄牛のうち3頭

 なお、全国的に行っている血清検査の今までの結果は、すべて陰性である。

  また、防疫対策としてこれまでに殺処分の対象となった家畜は、抗体陽性が確
認された牛を含め、牛3,563頭、山羊10頭、羊35頭、豚9頭に上っている。

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進められる対応策と感染源の特定

 アルゼンチンは問題発生後、OIEの国際家畜衛生規約に基づき、フォルモサ州、
コリエンテス州とエントレリオス州の一部を、サーベイランス地域に指定し、家
畜取引などについて厳重な管理を実施している。また、SENASAは、8月11日付け
の決議(1133/2000)で、全国を対象として直ちにと畜に向けられる家畜などを
除き、口蹄疫に感受性のある家畜の移動を21日間禁止することとし、その後さら
に15日間この措置を延長した。

 また、アルゼンチン農牧水産食糧庁は8月10日付けの官報で、現在、実施して
いる口蹄疫の防疫対策が終了するまで、米国およびカナダ向けの牛肉(冷蔵・冷
凍)輸出を一時的に停止する措置を発表した。なお、問題発生後、アルゼンチン
産牛肉等に対する輸入禁止など輸入規制措置を講じている国は、米国、カナダ、
台湾、ポーランド、チリ、パラグアイ、ウルグアイ、グアテマラ、ベネズエラ、
イスラエル、中国などとなっている。

 一方、採取された血清は、SENASAの中央研究所において検査が行われ、不法
輸入され抗体陽性が確認された4頭の牛のうち1頭から血清型A24ウイルス株の存
在を示唆する結果が得られ、現在確認のためパンアメリカン口蹄疫センターと英
国パーブライト研究所にサンプルを送っている。


注目されるOIEの対応とメルコスルの口蹄疫対策

 SENASAの報告によると、血清型A24型の株は今までアルゼンチンに存在し
なかったもので、他国からの移入の疑いがあると見ているものの、アルゼンチン
は現段階で同国での口蹄疫の発生を認知していない。このため、OIEはアルゼン
チンに対しこの点について確認を求めているが、同国の口蹄疫に関する衛生ステ
ータスの変更について現段階では言及していない。

 南米では、このほか8月下旬にブラジルのリオグランデドスル州で、口蹄疫の
発生が確認され、大規模なまん延防止対策が講じられている。また、ボリビアで
も口蹄疫が発生している。こうした中、9月2日にブラジルでメルコスル農相会議
が開催され、南米における一連の口蹄疫問題について検討された。この結果、今
後メルコスル地域一体となった口蹄疫問題への取り組みの必要性が確認された。

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