アルゼンチン、ブラジル産鶏肉にダンピング制裁措置


7月からアンチダンピング税を賦課

 アルゼンチン経済省は7月24日付け官報で、アルゼンチン向けブラジル産鶏肉
丸どりの最低輸出価格(FOBベース。以下同じ)を設定し、輸出価格が最低輸出
価格を下回る場合、その差額相当分をアンチダンピング税として賦課する旨の決
議(7月21日付け決議574/2000)を発表した。

 同決議によると、サジア社に対して0.92ドル(約100円:1ドル=109円)/kg、
アビパル社を含むその他の輸出業者に対して0.98ドル(約107円)/kgの最低輸
出価格が設定され、ダンピング行為が認められないと判定されたセアラ社とニコ
リニ社からの輸入については、アンチダンピング税の対象から除外された。なお、
同決議は、官報で発表された翌日から3年間有効となる。


97年のブラジル産鶏肉の輸入急増が背景

 今回の決定は、97年、ブラジルからアルゼンチンへの鶏肉輸出が急増したこと
を背景に、アルゼンチン鶏肉産業の利害を代表するアルゼンチン養鶏加工協会
(CEPA)が、ブラジル産鶏肉丸どりにダンピングの疑いがあるとして、調査を
要請したことに端を発するものである。99年1月にダンピング調査開始の決定が
され、同年12月にアルゼンチン経済省の国家貿易委員会は、ブラジル産鶏肉丸ど
りのダンピング輸入によりアルゼンチン鶏肉産業に損害が生じているとの結論を
下した。

 96年と99年のブラジル産鶏肉(丸どり)のアルゼンチン向け輸出量・輸出額を
比較すると、輸出量が2.1倍に増加する一方、平均輸出単価は21%安くなっている。

◇図 ブラジル産鶏肉(丸どり)アルゼンチン向け、輸出量・輸出額◇

 両国間の鶏肉貿易については、ブラジル鶏肉輸出業者協会(ABEF)とCEPAの
間で、ブラジル産鶏肉輸出枠などを取り決めた紳士協定が締結されたが、ブラジ
ルが輸出枠を上回る数量を低価格で輸出したことから、99年10月、同協定は破棄
された。

 同年11月には、ブラジルとの国境に位置するエントレリオス州の鶏肉生産者団
体からの訴えを受けた同州の連邦裁判所が、ブラジル産鶏肉輸出枠を月間3,742
トンとする旨の判決を下した。これに対し、アルゼンチン経済省は、国内の判決
は国家間の貿易問題に対し無効とする決定を下している。

 また、今年2月、アルゼンチン政府は、ブラジル産鶏肉に対し、国単位の無菌
証明に加えて、ロット単位の無菌証明の提出を義務付ける旨の衛生規制措置を講
じた。


ブラジルはWTO提訴の意向を表明

 アルゼンチン政府が決定した今回のダンピング制裁措置について、ブラジル政
府は、事前調査の不備を指摘した上で、アルゼンチンに対して同措置の見直しを
求めていた。

 こうした中、8月中旬、リオデジャネイロ市で南米南部共同市場(メルコスル)
会議が開催されたが、鶏肉ダンピング問題について、両国間で意見の一致は見ら
れなかった。しかし、アルゼンチン政府は、同問題について両国の業界団体が相
互に合意した調整案があれば、今回の措置を見直す構えを見せたことから、AB
EFとCEPAによる協議の展開が注目されたが、結局、両団体による打開策は見出
されなかった。このため、ブラジル政府は、8月末、同問題をメルコスルの紛争
処理機関に委ねることを決定し、ここで問題が解決されない場合、WTOに提訴す
る意向があると報じられた。

元のページに戻る