豪州養豚業界、小麦輸出制度の改善を要求


小麦価格の上昇は養豚経営を圧迫

 豪州豚肉生産者協議会(PCA)は、このほど、豪州小麦公社(AWB)の一元輸
出機能の存続を検討する政府の規制緩和委員会に対し、AWBが決定する輸出価格
が、国内の小麦価格上昇に大きな影響を与えているとして、改善を求める意見書
を提出した。

 PCAが提出した意見書によると、養豚経営コストに占める飼料費の割合は約53
%と突出していることから、小麦価格の上昇は、小麦を飼料に用いる豪州の養豚
経営に大きな影響を与えているとし、AWBが豪州小麦生産量の約85%(1,700万
トン)を一元的に輸出しているため、AWBが決定する輸出価格が国内への供給価
格を大きく左右し、現状では小麦価格を高値に押し上げているとしている。この
結果、養豚経営は圧迫され、養豚産業の国際競争力の強化を阻害しているとして
AWBの輸出機能の改善を要求している。


コスト削減により輸出市場への参入を図る養豚産業

 今回、報告書を提出した背景には、生産コストの削減を阻害する要因の排除を
行い、養豚業界の再構築により国際競争力を強化し、輸出市場への参入を推進す
ることが目的であったものとされている。

 豪州の養豚産業は、96年にカナダ産輸入豚肉の増加により国内市場が暴落し、
存亡の危機を迎えたが、政府による補助政策の実施や、その後の台湾、韓国で発
生した口蹄疫、また、マレーシアでのニパウイルス発生などが追い風となり、シ
ンガポールや日本向けを中心に97年以降、急激に輸出を伸ばしている。

 PCAの報告書では、養豚産業のみならず、肉牛肥育など畜産全般についても、
小麦価格の上昇がコスト増の要因につながるとしており、フィードロット産業な
どもPCAの方針に賛同しているとしている。


改善が求められる養豚生産

 一方、業界の取り組みとは裏腹に、豪州の養豚生産環境は、肉牛産業と比較し
て非常に小さく、日本の約3分の1程度である。99年のデータによると、豚飼養農
家戸数は約3,000戸、母豚飼養頭数は約35万頭、年間と畜頭数は約517万頭、豚肉
生産量は約37万トン(枝肉ベース)、輸出量は3万2千トンとなっている。

 また、輸出については、品種の不統一による肉質のばらつき、枝肉重量の不均
一、未去勢豚肉特有のにおいなどが、問題点として挙げられている。

 PCAにより豚肉輸出振興機関として設立された豪州豚肉輸出連合(CAPE)は、
これらの問題について、国内で生産・流通の再構築を進めているところであり、
輸出に対しては雌豚出荷での対応や、品種の改良、また、飼養方法や去勢技術の
浸透に力を入れていることから、改善に向かっているとしている。

 豪州の養豚産業は、豊富な飼料と広大な土地を持ち、また、輸出型産業として
確立した肉牛産業をケーススタディの材料として、輸出を念頭においた国内の生
産、流通の構築が可能であることから、輸出に対する潜在能力は高いとの見方も
あり、今後、どのような展開を見せるか注目される。

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