安定の兆しを見せる台湾の養豚産業


養豚農家戸数はわずかに減少

 行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)が先ごろ公表した今年5月末現
在の豚の飼養動向調査報告によると、台湾の養豚農家戸数は前年同期並みの15
,828戸で、口蹄疫発生(97年3月)直前の96年11月末時点の調査に比べ、37.6%
の減少となった。また、前回調査(99年11月末)と比較すると、マイナス1.2ポ
イントとわずかに減少した。

◇図 養豚農家戸数の推移◇


政策誘導などもあり、平均飼養頭数はさらに増加

 今回の調査報告では、飼養頭数が前回調査比0.9%増となったのに対し、飼養
戸数は逆に1.2%減となったことから、1戸当たりの平均飼養頭数は前回調査より
も10頭多い462頭となり、3回連続で増加した。

 台湾では、世界貿易機関(WTO)加盟をにらんだ98年2月の米国との2国間交渉
の合意を受け、養豚業界の対応策が検討されてきた。この対応策の一環として、
小規模農家の離農補償なども行われるなど、政府はWTO加盟後の養豚構造調整に
余念がない。行政院農業委員会は、こうした大規模化の進展は、政府による養豚
産業の構造調整策などが効果的に作用した結果であると分析している。


安定段階に移行しつつある養豚産業

 飼養規模別の養豚農家戸数を見ると、飼養頭数が5,000頭以上の農家が0.8
ポイントとわずかに増加した以外は、どの階層でも前回調査時に比べて軒並み
減少した。しかし、養豚農家全体に占める飼養規模別養豚農家の割合は、前回調
査時とほとんど変化がなく、口蹄疫発生後の混乱や、WTOへの加盟をにらんだ
構造調整など、養豚産業をめぐる構造変化は、安定段階に移行する兆しを見せ始
めている。

◇図 規模別養豚農家の割合◇


依然として強い現状維持志向

 今回の飼養動向調査と併せ、飼養頭数100頭以上の養豚農家を対象に、今後半
年間における飼養規模に関する意向調査も行われた。これによると、7,871戸の
調査対象農家のうち、84%(前回調査時85%)の養豚農家が現在の飼養規模の
維持を希望し、依然として現状維持志向の根強いことがうかがえる。

 一方、規模拡大を希望する養豚農家は11%(同12%)、逆に規模縮小を考え
る養豚農家は5%(同3%)となっており、規模拡大の希望が縮小希望を上回っ
ている。これは、今年5月以降、台湾における生体重100kg当たりの平均肉豚卸売
価格が5千元台(1元=約3.51円)と高値で推移していることから、一部の養豚農
家の増頭意欲が刺激されたためとみられている。また、今回の調査で増頭志向が
前回より1ポイント減少し、規模縮小を考える養豚農家が2ポイント増加したこと
について、農業委員会は、昨年上半期に高値安定で推移していた豚価が、下半期
になって供給過剰で下落したことなどが背景にあるとみている。

規模別養豚農家戸数
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 資料:行政院農業委員会「台湾地区養猪頭数調査報告」
  注:( )内は99年11月末との比較

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