復興を遂げつつあるインドネシアの養鶏産業


ブロイラーの導入が養鶏産業をけん引

 インドネシアをはじめとする東南アジア各国は、97年後半から深刻な経済危機
に陥った。これにより、それまでの目覚ましい経済の伸長を背景とした畜産業も、
一時的に後退することとなったが、最近ではその後遺症から次第に立ち直りつつ
あるようだ。

 養鶏業は、畜産業の中でも比較的資本投下の負担が軽く、農家が取り組みやす
い業種として、東南アジア地域では早くから発展を遂げてきた。しかし、インド
ネシアにおける近代の養鶏業の発展には、70年代後半におけるブロイラーの導入
が大きく貢献している。同国の97年における家きんの飼養羽数は、在来種(いわ
ゆる地鶏)が2億6千1百万羽、採卵鶏が7千1百万羽、あひるが3千万羽、ブロイラ
ーが6億4千1百万羽となっている。このうちブロイラーは、統計に初めて登場し
た81年と比較して25.2倍と、顕著な伸びを示している。


養鶏産業は経済危機により一時後退するも、その後は好転

 ところが、経済危機の影響を最も色濃く反映した98年の統計によると、全カテ
ゴリーで軒並み前年を割り込み、特に、商業的な集約生産が行われる採卵鶏は3
千9百万羽、ブロイラーは3億5千4百万羽と、前年の半数近くまで激減することと
なった。

 しかし、最近の緩やかな経済状況の改善による増羽意欲の向上から、99年(速
報値)は、下表のように飼養羽数が全カテゴリーで増加に転じた。98年との比較
では、全体で12.1%の増加となったが、他の家きんが10%以内の伸びにとどまっ
たのに対し、ブロイラーは18%の増加を見せ、この局面でもけん引役を演じた。

インドネシアにおける家きん飼養羽数の推移
indnesia.gif (13469 バイト)
 資料:インドネシア政府統計

 同様に、家きん肉生産も98年には前年を割り込んだものの、99年には在来種が
31万8千トン、採卵鶏(廃鶏)が2万7千トン、あひるが18万トン、ブロイラーが
33万7千トンにまで回復している。また、鶏卵生産量も98年は一時的に減少した
が、99年は増加に転じ、それまで順調な推移を見せていた97年の71%に相当する
54万6千トンに達している。

 鶏肉の小売価格も上昇傾向で推移しており、最低価格を記録した1kg当たり5,
700ルピア(約80円:100ルピア=約1.41円)に対し、今年7月上旬には6,800ルピ
ア(約96円)にまで回復している。最近の鶏肉需要の盛り上がりから、今後は
7,500ルピア(約106円)程度まで上昇するものと予測されている。


食肉の消費回復には、鶏肉生産がカギ

 インドネシアの家きん肉生産量は90年代前半に牛肉を追い抜き、現在では最も
国民に親しまれている食肉の地位を確立している。経済危機直後の98年における
の1人当たりの食肉消費量は4.24kgで、ピークとなった96年の8.41kgと比較すると、
半分近くにも落ち込んだ。99年は4.45kgと増加の気配がうかがえるが、経済危機
発生前の水準まで回復するには、その大宗を占める鶏肉の生産動向がカギになる
ものと思われる。

 なお、インドネシア養鶏農家協会は、養鶏産業の回復度に見合った飼料の供給
が十分に行われていないとして、養鶏産業の本格的な復興には、飼料産業セクタ
ーの立ち直りも不可欠であるとしている。

元のページに戻る