米FDA、鶏卵への放射線照射を認可


サルモネラ菌の大幅減が可能に

 米保健社会福祉省食品医薬品局(FDA)は7月20日、サルモネラ菌を抑制する
ため、鶏卵(殻付き)への放射線の照射を認可した。FDAによれば、今回認可さ
れた放射線量は、3キログレイまでとされており、上限近くになると卵黄の色と
卵の粘性に影響を及ぼすこともある旨報告されているが、安全性自体には問題が
ないとしている。

 FDAは放射線照射の効果について、サルモネラ菌の完全な消滅は保証できないも
のの、これらを大幅に減らすことが可能としている。なお、照射された鶏卵には、
放射線照射を行った食品であることを表示しなければならない。


大統領アクションプランの一環

 米国では、毎年3百万人以上がサルモネラ菌で発病し、医療費や生産性の低下
で多大な損失を被っているとされ、サルモネラ菌対策が大きな問題となっている。
クリントン大統領の肝いりで98年8月に発足した食品安全性に関する協議会では、
鶏卵の安全性確保がサルモネラ菌対策の優先課題の1つとして指摘され、99年
12月には、鶏卵関連のサルモネラ菌による発病件数を2005年までに半減し、2
010年にはゼロとすることを目標としたアクションプランが発表された。

 このプランは、鶏卵の生産現場から消費に至る各過程における衛生状況の改善
に必要なシステムの構築、サルモネラ菌に起因する病気の発生状況の監視、研究、
教育活動などを網羅した包括的な取り組みを可能にするもので、これまで数回の
公開会議を開催して意見を聴取するなど、検討が続けられている。また、7月末
には、新たな安全基準に関する規則の提案などに向けて、現在の試案を検討する
公開会議が開催された。


普及のカギは消費者の反応

 米国での放射線照射の取り組みは、1963年のカビの抑制を目的とした小麦粉に
始まり、翌年にはジャガイモ(発芽防止)、86年には果実、野菜、ハーブおよび
香辛料(昆虫・微生物の除去、シェルフライフの長期化など)が承認されている。
畜産物では86年に旋毛虫の不活性化を目的として豚肉が承認されたほか、92年に
は家きん肉、2000年2月には食肉全般に対して、食中毒の原因となる病原体を抑
制するために放射線照射が認められた(これまでの経緯については、本誌2000年
2月号「トピックス」参照)。

FDAによるこれまでの放射線照射食品の認可状況
fda.gif (25984 バイト)
 資料:米疾病管理予防センター
  注:食肉および家きん肉については、FDAとUSDA双方の
    認可が必要とされている。

 放射線照射食品の普及に当たっては、消費者の反応が重要なポイントとなる。
フロリダ州では、6月中旬に放射線を照射した牛ひき肉が販売されたが、食品の安
全性を強調する店内でのキャンペーンや地元での広告なども奏功して、消費者か
らの反応は良好であったと報じられている。

 しかし、疾病管理予防センター(CDC)が成人1万人以上を対象として実施し
た放射線照射食肉(家きん肉を含む)に関するアンケート調査では、「放射線照
射食肉を進んで買う」と答えた人は半分に満たず(49.5%)、「買わない」と回
答した人が31.8%、「わからない」とした人が18.5%との結果であった。さらに、
「放射線照射による追加コストを支払っても良い」と答えた人は、ひき肉に関し
ては22.7%、鶏肉に関しては24.5%となっており、放射線照射食肉に対する消費
者の受容度は、今一つであることが伺える結果となっている。

 放射線照射は食品安全性の向上に貢献することは間違いないが、鶏卵について
消費者からどのような反応を得られるのか、興味深いところである。

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