タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○好スタートを切る2001年の鶏肉輸出


今年第1四半期の鶏肉輸出は前年比39.0%増

 タイの今年の鶏肉輸出は、昨年に引き続き好調なスタートとなった。タイブロ
イラー加工輸出業者協会が公表した今年第1四半期の鶏肉輸出量(速報値)は、
前年同期比39.0%増の10万トンとなった。形態別に見ると、冷凍鶏肉が34.1%増
の7万3千トン、鶏肉調製品が54.2%増の2万7千トンとなり、いずれも大幅に
増加している。これに伴い、輸出金額も冷凍鶏肉が40.3%増の49億9千万バーツ
(約134億7千万円:1バーツ=2.7円)、鶏肉調製品が54.3%増の34億7千万バ
ーツ(約93億7千万円)となり、タイの鶏肉輸出は活性化の局面を迎えている。

 こうした輸出の急増を受け、同協会は、今年の鶏肉輸出見込みを早くも上方修
正し、前年実績と比較して20.2%増の40万トンとしている。


 輸出状況を地域別に見ると、EU向けが前年同期比76.7%増の3万8千トン(冷
凍品と調製品の合計。以下同じ)となり、最大の輸出先である日本(4万1千ト
ン)と肩を並べるほど大幅に増加した。国別では、ドイツが58.9%増の1万4千
トン、オランダが2.1倍の1万3千トン、イギリスが71.2%増の1万トンと、主要
3ヵ国(全体の97.2%を占める)ともに大幅に増加している。EU向け輸出が急増
した主因としては、同地域において昨年から深刻化している牛海綿状脳症(BSE)
および口蹄疫の影響により、食肉需要の一部が牛肉および豚肉から鶏肉にシフト
したことが挙げられる。現地におけるタイ産鶏肉の引き合いは高まっていると伝
えられ、前年の第1四半期におけるEU向けむね肉の輸出価格は、1トン当たり約
1,600ドル(約19万4千円:1ドル=121円)と低迷していたが、今年は約2,700ド
ル(約32万7千円)まで急騰している。EUは従来、脂肪分が少ないむね肉を好ん
で輸入していたが、鶏肉のひっ迫感から皮なしもも肉も輸入し始めたとされる。

 こうした中、EUはこのほど、96年8月以降とっていた中国からの鶏肉輸入禁止
措置を解除すると発表した。認可された工場は8鶏肉加工場など14食肉工場に限
られているものの、将来的には、現在好調なタイのEU向け輸出に影響を与えるの
ではないかと見る向きもある。


存在感を増すアジア諸国向け輸出

 一方、アジア向けは、国内経済の不調などから日本向けが前年同期比0.5%増
の4万1千トンにとどまったものの、他の国々への輸出が大幅に増加したことか
ら、全体としては23.5%増の6万2千トンとなった。特に、けん引役となったの
が韓国向けで、6.3倍の8,900トンに達している。その他、ファストフード向け需
要の増加などでシンガポール向けが51.9%増の5,400トン、経済発展に伴い鶏肉需
要が高まる中国向けが2.5倍の3,200トン、また、マレーシア向けが2.3倍の1,900ト
ンと、いずれも大幅に伸びており、全体で日本向けの不調を補う結果となってい
る。なお、日本は6月8日、鳥インフルエンザの侵入を防止する目的で、香港・
マカオ産に続いて中国本土からの家きん肉などの輸入を一時停止する措置を講じ
た。日本が輸入する鶏肉の約4割が中国産であったことから、今後は日本のタイ
産鶏肉に対する需要が高まることも予測される。

 同協会は、今回、日本向け輸出に陰りが見られたことを憂慮しながらも、EUお
よび日本を含むアジアの2大輸出地域双方で追い風が吹き始めたことを受け、鶏
肉輸出の好調は、今後もしばらく続くものとみている。

◇図:第1四半期における地域別輸出状況◇

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