香港で鳥インフルエンザ、鳥肉料理消える(中国)


当局の迅速な対応、4年前の悪夢再来を阻止

 香港特別行政区当局は5月18日、16日までに死亡した797羽の鶏について調査
した結果、鳥インフルエンザウイルスが分離されたことから、今後2週間で、2
00ヵ所を超える域内すべての養鶏場などの家きん類約120万羽を処分すると発表
した。

 香港では97年に鳥インフルエンザが流行して猛威を振るい、鶏など家きん類14
0万羽が処分されたほか、人にも感染が拡大して6人の死者を出している。それ
だけに当局の対応は素早く、5月16日午後の4時間で鶏6,608羽が処分された。
そして感染地域が予想以上に広く、疾病の拡大が懸念されたため、5月18日には、
アヒルやガチョウなどを含めた120万羽の処分に切り替えられ、域内10ヵ所の家
きん市場はすべて閉鎖された。また、1日当たり10万羽相当といわれる香港の家
きん肉消費は、そのほとんどを中国本土からの輸入に頼っていたため、中国本土
からの家きん類の輸入も禁止された。当局が支払う処分費用は、8千万香港ドル
(約12億7千万円:1香港ドル=15.9円)にも達する見込みとなっている。同様
の疾病は、マカオでも発生した。

 なお、在京香港経済貿易代表事務所などからの通報を受けた日本国政府は、5
月18日に香港からの、24日にはマカオからの家きん肉などの輸入を停止している。


夏休みを控え、観光業界などにも打撃

 鳥インフルエンザウイルスは、遺伝子としてリボ核酸(RNA)を持ち、たんぱ
く質の殻(カプシド)によって覆われている。このカプシドには、赤血球凝集素
(hemagglutinin)とノイラミニダーゼ(neuraminidase)という2種類の突起
があり、両者のたんぱく性状(抗原性)の違いなどにより、多様な血清型に分類
されている。今回発見されたのは、H5N1という新しいタイプのものである。

 H5およびH7型については、国際的に重要な家きん疾病として位置付けられ、
日本では家畜伝染病予防法において、「家きんペスト」として家畜法定伝染病に
指定されている。

 今回発見された血清型ウイルスについて、当局は人に感染しないことが確認さ
れているとしているが、インフルエンザウイルス属のウイルスは変異を起こしや
すく、当局関係者も、「ウイルスが変異することなども考慮して処分を決めた」
としている。

 香港では、家きん肉が重要な食肉として位置付けられており、この影響により
家きん肉の卸売価格が10〜30%も下落した。また、域内の中華料理店などで、家
きん肉は欠くことのできない食材の1つであるものの、早々にメニューからの削
除を余儀なくされ、夏休みの需要期を控え、農畜産業界のみならず、観光業界な
どさまざまな分野にも打撃を与えることが確実とみられた。

 しかし、当局の迅速な対応により、5月30日には発表を上回る約140万羽の予
防的処分が完了し、事態は急速に収束へと向かった。

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