USDA、環境保全における教育の重要性を指摘


生産者への教育が新たな環境保全推進のカギ

 米農務省(USDA)は先ごろ、生産者の環境保全への取り組みに関する報告書
を公表した。この報告書は、ネブラスカ州、インディアナ州、イリノイ州、アイ
オワ州などの全米10ヵ所の分水界周辺地域における生産者を対象として、農業経
営の内容から環境保全の方法などに関する詳細な調査に基づきとりまとめられた
ものである。

 これによれば、生産者による新たな環境保全への取り組みに影響を与える一般
的な要因として、天候や土地条件の多様性、取り組みによる収益見込み、経営規
模その他の経営条件などが挙げられている。一方、バイオ技術のような情報集約
的な環境保全技術の導入については、調査地域にかかわらず、生産者への教育が
極めて重要な役割を担っていることが明らかとなった。このため、同報告書では、
最新技術の専門化や高度化を踏まえて、政府機関や大学の指導・普及機関(エク
ステンションサービス)などによる技術支援、コンサルティングなどを強化して
いくことが、環境保全事業を推進していく上でのカギになると指摘している。な
お、情報集約的な環境保全技術は、経験豊富な生産者が受け入れにくい傾向がみ
られたことについて、USDAでは、これらの生産者が代替となる方法に関する知
識を有しているか、経験の浅い生産者に比べて保守的であるためと分析している。

 また、農地の所有者と賃借者との間で、環境保全への取り組みに大きな違いが
示されなかったことに対して、USDAでは、多額の負担が必要でなかったことを
要因の1つとして挙げている。


環境保全を重要課題として位置付ける畜産団体

 畜産と耕種作物の複合経営体では、土壌分析などの土地の栄養状況に関する情
報集約的な管理を行わない傾向が見られる一方、肥料としてのたい肥の利用が多
いとしている。こうした状況については、今後施肥量の規制につながる制度が導
入された際には、当然変化を余儀なくされるものとみられる。

 なお、USDAの主な環境保全事業としては、土壌浸食などで保全の必要性が認
められる農地の保有者に対して、当該農地の休耕に対して助成を行う土壌保全留
保計画(CRP)や、土壌、水質その他の自然資源を保全するため、生産者に対し
て、技術、財政および教育的な支援を行う環境改善奨励計画(EQIP)などがある。

 内容自体は充実してきたとの評価がある一方、環境保全に関する自然資源保全
局(NRCS)や農業研究局(ARS)の技術担当者および研究者の人員や生産者への
補助の削減から、これらの政策の効果が生産者に届いていないとの批判もなされ
ている。次期農業法についても、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)やその他
の畜産団体などが環境保全を重要課題の1つに挙げており、今回の報告などを踏
まえた議論が行われていくものと思われる。

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