終息のめどが立たない口蹄疫の拡大(EU)


1千件を超えたイギリスの口蹄疫発生、輸出再開も先

 イギリス農漁食料省(MAFF)によると、口蹄疫の発生確認件数は4月15日ま
でに1,320件に上っている。発生から1ヵ月以上が経過したが、今のところ終息
のめどは立っていない。

 処分された家畜は100万頭に達し、このほか56万頭が処分待ちとなっている。
また、感染家畜などの処分を遂行するため、感染地に向けて軍隊も派遣されてい
る。

 政府は、感染の拡大を防止するため、北イングランドおよび南スコットランド
の発生多発地域については、口蹄疫の発生が確認された農場だけでなく、発生農
場から3キロ以内の農場についても全家畜を処分する方針を明らかにしている。
このほか、ノーザンプトンなどの3つの家畜市場が感染拡大の場になったとして、
3市場を経由した家畜やこれらと接触した家畜も処分対象に含めるとしている。

 発生農場飼養分以外で処分対象となる家畜は数十万頭に上るとの見方もあり、
最終的には、イギリス国内の家畜飼養頭数の約半数が処分されるとの報告もある。 

 同国は、67年にも口蹄疫の大発生を経験しているが、今回の発生は、感染地域
もより広く、家畜の処分頭数も前回の大発生時を上回る結果となった。

 口蹄疫の被害を受けた農村各地では、農家への影響を重視しなかった政府に責
任があるとして、口蹄疫対策の遅れを強く非難しており、終わりが見えない状況
の中で、政府と農家との溝も確実に広がっている。

 イギリス国内の報道では、口蹄疫は最終的に6千件に達するとの見方もあり、
畜産業界ではイギリス産食肉および食肉製品の輸出は、早くとも2004年までは難
しいとみている。


イギリスの観光産業にも大きな打撃

 このような中、イギリス国内では、国内総生産の約3%程度にしかすぎない農
業よりはむしろ、口蹄疫発生に伴い減収が懸念される観光産業への影響や選挙の
遅れに関心が注がれている。国内の各観光地では、口蹄疫の拡大に伴い自然公園
や景勝地などの閉鎖が続いており、春先の観光シーズンを迎える中で、宿泊客の
キャンセルが相次いでいる。また、当初、5月初旬に予定されていた国内の総選
挙も、口蹄疫の拡大を受けて実施が6月に延期されるなどの事態となっている。
イギリスの観光産業は、国内各地にとって大きな収入源である上に関連産業も多
いため、今回の口蹄疫発生による被害額は、末端まで含めるとおよそ50億ポンド
(約9千億円)を上回るとみられている。

オランダでは発生件数が微増、フランスは一部地域を除き域内輸出を再開

 オランダ農業省は4月11日、国内で22件目となる口蹄疫の発生を確認した。イ
ギリスでの口蹄疫発生以後、欧州大陸での発生確認は、オランダの22件、フラン
スの2件、アイルランドの1件となっている。オランダでは、感染の拡大を防ぐ
ため、EUの常設獣医委員会(SVC)の承認を受けて、感染家畜などの迅速な処
分が困難な場合に限りワクチン接種を実施しているが、微増状態で発生が続いて
いる。オランダ政府はこれ以上の拡大を防ぐため、口蹄疫を国家的災害として捉
え、国民に対して事態の深刻性の認識を訴えている。

 一方、フランスでは、3月23日に2件目の発生が確認されたのを最後に、その
後の発生が確認されなかったため、SVCによる輸出禁止措置は4月13日に一部地
域を除いて解除され、EU域内への輸出が再開された。

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