全人代、国家基盤として農業を最重視(中国)


十五の審議・採択が会議の目玉

 中国の最高国家権力機関で、国会にほぼ相当する全国人民代表大会(全人代)
が3月5〜15日、北京で開催された。全人代は各省、自治区、特別行政区および
人民解放軍などが選出する代表により構成され、大会は毎年1回開催される。
1954年に第1期の大会が開かれ、今年は第9期第4回会議となる。

 大会前日の準備会議で、李鵬全人代常務委員長が述べたように、今年の全人代
では、昨年10月の第15期中央委員会第5次全体会議(5中全会)で草案が承認さ
れた「国民経済と社会発展の第10期5ヵ年計画」(2001〜05年:「十五」)の審
議・採択が主要な議題となった。

 朱鎔基国務院総理は3月5日、十五の要綱について報告し、国内総生産(GDP)
成長率の目標を年率7%としながらも、都市部の失業率を5%前後まで容認する
ことを明らかにした。これは、経済成長を持続させながらも、国有企業のリスト
ラクチャーなど、世界貿易機関(WTO)加盟後の市場経済化に伴い、さらなる
「戦略的な構造調整」を強いられることを覚悟したものと評価されている。


農業の地位強化を経済活動の最優先に

 十五では、中国のWTO加盟などをにらみ、総合的な国力と国際競争力の向上を
目指し、科学技術の革新や情報技術(IT)の積極導入などが重視されている。た
だし、朱総理は十五の要綱報告の中で、農業の基礎的地位の強化と農民の増収を
図ることが経済活動の最重要任務であると述べた。その上で、農業の構造調整と
経済効率を高め、食糧生産の安定と品質向上を図り、多様な方法で関連産業を発
展させるとともに、農村の税制改革をはじめとする諸改革を推進するとした。

 しかし、@今後予想されるWTO加盟により、中国への安価な農産物輸入が増え
るのは確実とみられること、A中国の農民収入の伸びは、98年が前年比4.4%増、
99年が3.8%増、2000年が2.1%増と年々鈍化傾向にあること、B都市部の住民と
の収入格差も広がっていることなどから、農民の増収は容易ではないとの見方も
強い。

 とはいえ、農民所得の向上は、13億近い中国の人口の約7割が在住するとされ
る農村部の安定と、経済発展を推進する内需拡大のためにも、不可欠な要素とな
っている。2月下旬に海南省を視察した江沢民国家主席も、十五に関して農業を
国民経済の最上位に置き続けなければならないと述べ、国家安定の基盤となる農
業を最重視する姿勢を鮮明にしている。

 なお、朱総理は3月5日の全人代で、中国政府は引き続き保護価格で農家から
無制限に余剰穀物を買い上げ、これによって低迷する穀物価格の適度な回復が促
進されると語り、穀物の買い上げ政策を引き続き維持することを明らかにした。


中国のWTO加盟の行方は?

 全人代は3月15日、十五と今年の経済計画および予算、外資系企業への規制緩
和を目的とする中外合資経営企業法改正案などを可決・承認して閉幕した。今年
の全人代最大の目玉ともいわれた十五には、2010年のGDPを2000年の倍にすると
いう目標の下、社会保障制度の確立や農村部の発展などを図る一方で、中国のW
TO加盟を想定した産業構造の調整なども盛り込まれている。

 しかし、その中国のWTO加盟問題は、目下のところ足踏み状態となっている。
この背景には、WTO中国加盟作業部会において、農業補助金の取り扱いなどをめ
ぐり、米中の対立が鮮明になってきたことがあると言われる。国内農業補助の額
は、先進国では農業総生産額の5%までだが、発展途上国の場合、それが10%ま
で許容されていることから、中国は途上国待遇での加盟を求めている。一方、米
国は政権交代により対中政策に変化が現れており、現政権は中国を競争相手と見
なし、中国は先進国であるとして厳しい態度で望んでいる。

 WTO中国加盟作業部会の会合は、1月中旬に時間切れで閉会されたまま、3月
23日に米中の通商関係者が「誠実な話し合い」をしたとの情報もあるものの、目
下のところ表向きは開催のめどが立っていない。このため、同部会で加盟議定書、
作業部会報告書、関税譲許表などの付属書をまとめて一般理事会で採択、中国が
それを受諾した30日後に加盟実現という手続きから考えて、中国のWTO加盟は早
くても今年秋以降、場合によっては第4四半期までずれ込む(スパチャイ次期W
TO事務局次長(元タイ副首相))とみられている。

 さらに、米議会には、中国に対する恒久的な正常貿易関係(NTR:最恵国待遇)
の付与について、もう1年延期しようという動きがあるとの情報もあり、中国の
WTO加盟に当たっては、今後も曲折が予想される。

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