初生びなの価格が大幅に下落(ミャンマー)


家きん繁殖開発計画と疾病対策で羽数は増加

 ミャンマーでは、飼料費の上昇を主な原因として、養鶏産業の収益性が低下し
ていることから、8月中旬以降、初生びなの売れ行きが落ち込む中、価格が大幅
に下落している。このような状況の下、多くのふ卵場は行き先を失った初生びな
であふれており、この状況が長引けば経営が立ち行かなくなるふ卵場も出てくる
とみられている。

 ミャンマー政府は、昨年8月、家きん繁殖開発計画を立ち上げた。同計画では、

(1)同国鶏の88%を占める在来鶏の増殖・配布、

(2)卵肉兼用で優良な在来鶏であるロード・アイランド・レッド種(以下RIR
  種)の繁殖農家の設立、

(3)輸入を含めた初生びな生産独占企業の排除、

(4)卵、鶏肉の生産・供給安定化による消費者価格の安定、

の4つを目標としている。畜水省家畜生産・獣医局によれば、同国では、毎年ニ
ューカッスル病が多発し、養鶏産業の障害となっていたが、昨年、豪州から試験
的に供給された耐熱性ワクチン(タブレット状で飲水に溶かして給与)の効果に
より、本病の発生が抑えられ、鶏の羽数は順調に増加しているという。同局によ
れば、今年3月末日現在の鶏の羽数は、前年同期の約3,953万羽から約22%増え
て約4,827万羽となっている。特に増殖に力点の置かれている在来鶏の中でも優
良とされるRIR種は、前年同期の約70万羽の約2.7倍である約187万羽まで増えて
いる。


国内大手ふ卵業者による初生びな価格の引き下げも売れ行きには結びつかず

 このような状況の中、国内大手のふ卵業者であるミャンマーCP社は、何とかし
て採卵鶏の初生びなの販売を拡大しようと、7月まで1羽当たり185チャット
(約33円:実勢レート1チャット=0.18円)で販売していたものを8月中旬には
1羽当たり100チャット(約18円)まで引き下げた。

 同国内には現在、外国種向けと在来種向けを含めて30ヵ所のふ卵場があり、年
間約1千8百万羽の初生びなを生産している。しかし、毎週2万羽以上の初生び
なを生産できるのは、ミャンマーCP社以外にミャンマー・マイ・カ産業社とウ・
アイ農場の3ヵ所のみで、その他は毎週6千〜8千羽の生産規模にとどまってい
る。大手のうち、同国北部にある国内第2の都市マンダレーを本拠地とするウ・
アイ農場は、ミャンマーCP社に対抗する措置として、9月に入って、同社の生産
するハイライン種の初生びなをCP社より2割安い1羽当たり80チャット(約14円)
で販売すると発表した。しかし、畜水省によれば、同国の初生びなの生産コスト
は、1羽当たり135チャット(約24円)程度であるとしており、ひなの売れ行き
が悪いながらも他社は値下げには踏み切れていない。値下げを行った2社は、事
業内容が初生びなの販売に特化しておらず、飼料、薬品その他の生産物の販売で
あげた収益で初生びな事業の損失を補っており、値下げできないふ卵場の中には
一時的に業務停止を余儀なくされるところも出始めている。


飼料原材料価格は上昇、中小ふ卵場の閉鎖の懸念

 同国は、自然条件に恵まれており、飼料原材料であるトウモロコシ、落花生粕、
ゴマ粕などを自給しているが、仏暦の新年明けである5月以降、同国の通貨チャ
ットの交換レート下落傾向が続いており、通常、輸出価格とパラレルに推移する
これら原材料の国内価格がじりじりと値を上げている。現在の状況が続けば、中
小ふ卵場の閉鎖も懸念されており、政府の計画とは裏腹に、ふ卵業の寡占化に拍
車がかかる恐れがある。

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